「年収の手取りと額面はどう違う?」
「給与から引かれるお金は?」
年収には、額面年収や手取り年収などがあり、違いを把握できていない方もいるでしょう。
額面年収は給与の総支給額であり、手取り年収は給与の総支給額から、税金や社会保険料などを差し引いた金額です。
額面年収と手取り年収は区別して使用されるので、違いを認識しておくことが大切です。
また、給与から引かれるお金や計算方法を把握しておくと、給与を正確に把握する際に役立ちます。
本記事では、年収の捉え方などについて詳しく解説します。
これから働いてお金を稼ぐ方の中で、もっとお金を稼ぎたいと考えている人は多いでしょう。 しかしながら、稼いだ金額が全てもらえるというわけではなく、いくら稼げば手取りがいくらもらえるのだろうと疑問を持っている方が大半だと思います。 […]
額面年収と手取り年収の違い
年収を正確に把握するには、「額面年収」と「手取り年収」の違いを把握しておく必要があります。
それぞれの違いをご紹介しますので、ぜひ、チェックしてみてください。
額面年収とは
額面年収は、給与の総支給額です。
額面年収には、以下が全て含まれます。
- 基本給
- 税金
- 社会保険料
- 手当
- 残業代
- ボーナス
通常、年収と呼ばれるのは「額面年収」です。就職活動における求人では、額面年収が記載されています。
手取り年収とは
手取り年収は、給与の総支給額から税金や社会保険料などを差し引き、手元に残る金額です。
会社から実際に口座に振り込まれるのは手取り年収です。
額面年収から控除される金額
額面年収から様々な金額が差し引かれます。
主な負担は社会保険料と税金です。
額面年収から控除される金額を把握しておきましょう。
社会保険料
社会保険は、以下の5つの総称です。
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
労災保険は会社が全額負担しますが、その他の保険料は給与から天引きされるのが一般的です。
社会保険料は、標準報酬月額に左右されます。
健康保険料
健康保険料は、医療制度を利用するための保険料です。
医療機関受診時の自己負担が少なくなったり、健康問題が原因で働けなくなった場合に保障を受けられます。
健康保険料の算出は、標準報酬月額が基準となっています。納税は、勤務先と従業員が折半する仕組みです。
介護保険料
介護保険料とは介護保険制度のための保険料です。
保険料を負担するのは、40歳~64歳までの会社員や自営業者です。
介護保険料の算出は、標準報酬月額を基準に行われます。納税は、健康保険料と同様、勤務先と従業員が折半する仕組みです。
厚生年金保険料
厚生年金保険料は、老齢厚生年金のための保険料です。
保険料は、標準報酬月額をもとに算出されます。勤務先と従業員が折半して保険料を支払います。
雇用保険料
雇用保険料は、失業保険などの利用のもとになる保険料です。
雇用保険料は業種により異なるのが特徴です。
税金
課税所得がある場合、税金が発生します。
税金の負担は主に、「所得税」と「住民税」です。
それぞれについて把握しておきましょう。
所得税
所得税は課税所得がある場合に国に対して支払う税金です。
所得税は通常、給与から源泉徴収されます。
扶養家族の有無など様々な要因により変動するのが特徴です。
毎月の源泉徴収税額の合計と年収をもとに算出した所得税が異なる場合を想定し、年末調整が行われます。
住民税
住民税は、課税所得がある場合に都道府県に対して支払う税金です。
住民税は前年度の所得をもとに算出されます。
手取り年収の計算方法
手取り年収を把握するには、計算方法を把握しておくことが大切です。
手取り年収の計算方法について見ていきましょう。
手取り年収の目安は額面年収の8割程度
額面給与から差し引かれる金額は、以下のような様々な要因により異なります。
- 収入
- 家庭環境
- 勤務先
手取り年収をおおまかに知りたい場合は、額面年収の8割程度と考えておきましょう。
手取り年収から額面年収を算出することも可能です。
ボーナスの手取りの計算
ボーナスを受け取る場合、ボーナスからの税金、社会保険料の控除を考慮する必要する必要があります。
ただし、ボーナスは住民税控除の対象外です。
ボーナスの手取り金額を算出する際は、ボーナスの額面から社会保険料と所得税を差し引きます。
手取り年収を増やすためのポイント
額面年収から手取り年収を算出すると、不満に感じる方もいるでしょう。
手取り年収を増やすには、額面年収から引かれる金額を最小限にするか額面年収自体を増やす必要があります。
手取り年収を増やすためのポイントをチェックしましょう。
活用できる控除を把握しておく
控除を活用することで、額面年収から引かれる金額を抑えることが可能です。
たとえば、以下のような控除制度があります。
- 医療費控除
- 住宅ローン控除
- 生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
- 地震保険料控除
控除制度は自動で適用されるわけではないので、条件を満たしている場合、自身で申請する必要があります。
年収アップにつながる会社へ転職する
額面年収を増やすには、年収の高い会社へ転職するのも手段です。
額面年収が増えれば、自ずと手取り年収も上がります。
また、雇用形態を変えて年収アップを目指す方法もあります。
たとえば、「パート・アルバイトから正社員になる」などの方法で年収が上がるでしょう。
現在の年収に満足していない場合は、転職を選択肢の1つとして検討しましょう。
転職時の年収に関するポイント
年収アップ目的で転職する場合、年収について正しく把握しておくことが大切です。
額面年収や手取り年収の意味を把握せずに比較すると、失敗につながります。
年収を意識した転職を行う際、押さえておくべきポイントを解説しますので、ぜひ、チェックしてみてください。
年収をきかれたら額面年収を答える
転職する際、面接などで年収を聞かれることがあるでしょう。
年収を聞かれたら、「額面年収」を答えるのが一般的です。
転職先では、額面年収を実力を評価する材料にするケースがあります。
手取り年収を答えると、額面年収と捉えられ、評価が正当に行われない可能性もあります。
転職先に年収を聞かれた場合は、額面年収を答えることを把握しておきましょう。
求人票記載の給与は額面年収と認識しておく
転職活動を行う際、募集要項の給与をチェックしますが、額面年収と認識しておくことが大切です。
記載方法は、「基本給」「年収」など企業によって異なりますが、一般的に額面年収です。
額面年収を手取り年収と捉えて転職すると、「こんなはずではなかった」という不満につながります。
正しく年収を把握し、転職先を決めましょう。
年収交渉をする際は額面年収を伝える
年収交渉する際は、額面年収を伝える必要があります。
転職する際、面接や書類などで希望年収を聞かれることがあります。
また、年収交渉するケースもあるでしょう。
転職先に希望年収を伝える際は、額面年収を伝える必要があります。
一般的に、年収交渉では「額面年収」と捉えられるので、手取り年収を伝えると実際の給与が低くなる可能性があります。
年収の捉え方の相違がないよう、年収交渉では額面年収を伝えることを把握しておきましょう。
給与明細書をチェックしよう
給与明細書の内容の見方が分からないという方もいるでしょう。
給与明細書には、以下の内容が記載されているので、確認しておきましょう。
- 給与額
- 社会保険料
- 税金
- 控除金額
給与明細書を確認するポイントをチェックしてみましょう。
勤怠状況を確認する
給与明細で勤怠状況を確認します。
給与明細書には、以下が記載されています。
- 出勤日数
- 有給休暇の取得日数
- 時間外労働
- 残業時間…など
給与に直結するので、相違がないかの確認が必要です。
支給額を確認する
給与明細には、支給額が記載されています。
支給額としては、以下が挙げられます。
- 基本給
- 時間外手当
- 住宅手当…など
支給額の内訳を把握しておきましょう。
控除額を確認する
給与明細を確認する際は、控除額にも着目しましょう。
控除額としては、以下が記載されています。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税..など
通常、額面給付の2~3割程度が差し引かれています。
年収に関するQ&A
年収に関し、よくある質問をご紹介します。
気になる方はチェックしてみてください。
Q.年収が増えても手取り年収が下がることがある?
A.年収が増えると手取り年収も増えるという認識の方が多いですが、必ずしもそうではありません。
年収アップにも関わらず、手取り年収が減るケースもあるのです。
というのも、年収が上がると、社会保険料や税金も上がります。
年収が上がったとしても、引かれる金額が上がると、手取り年収が変わらないもしくは減るという状況になります。
Q.社会人2年目で手取り年収が下がりやすい?
A.社会人2年目では、手取り年収が下がる可能性があります。
というのも、社会人2年目で住民税の支払いが開始されます。
社会人が支払う税金は、主に「所得税」と「住民税」です。
所得税は社会人1年目で課せられるのに対し、住民税は前年度の所得が対象となるので、2年目以降なのです。
2年目で住民税の負担が発生することにより、手取り年収が下がる可能性は十分考えられます。
Q.所得税は過払いの可能性がある?
A.住民税は前年の所得が対象なので過払いの可能性はないですが、所得税は実際の納税額と源泉徴収税額に差が生じることがあります。
所得税は毎月の所得から天引きにされていますが、所得控除を考慮されていません。
扶養控除等がある場合は、所得税を多く支払うことになります。
所得税を払いすぎた場合、年末調整により戻ってきます。
Q.同じ基本給で手取り収入に差が生じる理由は?
A.基本給が同じであっても、手取り収入に差が生じるケースがあります。
基本給以外に、手当や扶養家族の有無などが手取り収入に影響するためです。
社会保険料控除では、基本給のみならず手当も関与するので、手当が違うと控除額が異なります。
なお、住民税は前年度の課税所得が対象となるので、前年所得が手取り収入に影響します。
基本給が同じでも、手取り収入が一致するケースは少ないでしょう。
Q.4月から6月に残業が多いと手取り収入は下がる?
A.4月から6月に残業が多く、残業代が増えると、手取り収入が下がる可能性があります。
社会保険料は、標準報酬月額をもとに決められた等級により算出されます。
社会保険料の等級は、4月から6月の給与の平均が基準となり、1年間適用される仕組みになっています。
そのため、4月から6月の給与が上がると等級が上がり、社会保険料の負担が大きくなる可能性があるのです。
ただし、社会保険料が上がり手取り年収が下がったとしても、必ずしも損とは限りません。
将来的に、年金などに還元されるケースもあります。
まとめ
額面年収は「給与の総支給額」、手取り年収は「給与の総支給額から、税金や社会保険料などを差し引いた金額」というのが重要なポイントです。
正しく年収を把握するには、額面年収と手取り年収を区別して考えることが大切です。
たとえば、転職活動をする際、記載されている給与や転職先へ伝える年収が額面年収であることを把握する必要があります。
一方、手元に残る金額を把握したい場合は、手取り年収を算出します。
なお、手取り年収を増やすには、工夫が必要です。
額面年収と手取り年収の違いなどを把握し、年収についての理解を深めましょう。