ベンチャー企業で活躍できる人材の条件

ベンチャー企業の生存率は「5年後で15%」「10年後で6.3%」「20年後で0.3%」です。
ベンチャー企業は資金的余裕がなく、雇える従業員数に限りがあります。
その厳しい環境下で、ベンチャー企業が大企業と共存するためには「優秀な人材」を獲得することです。
優秀な人材は「ベンチャー企業の特性」を理解することで浮き彫りになります。
今回は「ベンチャー企業で活躍できる人材の条件」をベンチャー企業の特性と交えながらご紹介します。

1.ベンチャー企業が抱える「資金難」はメリットでもある

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ベンチャー企業が抱える問題は「資金難」です。
企業の資金難はスタッフへの「給与」や「保障」を不安定にさせます。
企業が不安定であれば優秀な人材も集まらず、「人材不足」に陥ります。
しかし、ベンチャー企業で就職を考えている方にとって、その資金難が生み出す「メリット」もあります。
そのメリットは「大企業との戦い方を習得すること」や「少人数だからこそ得られる経験」です。

1-1.ベンチャー企業は「資金難」により「人材獲得」が困難

ベンチャー企業は自己資本で始めることが多く、資金に余裕がありません。
その資金難により「安定した給与の支給」や「福利厚生の充実」ができません。
これが優秀な人材を集める最大の難関です。

マイナビの「2020卒大学生就職意識調査」では「大企業を志望している」と答えたのは52.7%であり、2013年から上昇しています。
また、就職先を選ぶポイントの1位(39.6%)は「安定していること」でした。
そして、2位(35.7%)は「自分のやりたい仕事ができる」、3位(19.0%)は「給料が良い」、4位(13.0%)は「これから伸びそう」、5位(12.8%)は「福利厚生の充実」でした。
これらのデータから今の学生は「大企業は安定している」というイメージを持っていることがわかります。
また、上位の5位までにベンチャー企業とは真逆のポイント(安定、良い給与、福利厚生)が入っていました。
学生の安定志向化はベンチャー企業にとって不利になります。その中でも、ベンチャー企業が注目する人材は「新卒」です。

株式会社ワークスアプリケーションズの元CEOの牧野正幸氏は「私は新卒採用に力を入れてきた。ベンチャー企業に就職するような優秀な中途採用はマーケットにはいない。優秀であれば自分で起業するはず。だからこそ新卒の中から優秀な人材を探し、教育をしてきた」と説明しています。
近年はベンチャー企業の「新卒」への期待も膨らんでいます。

1-2.ベンチャー企業の戦い方は「スピード」と「変化」

「資金難」の環境が生み出すのが「変化」と「スピード」です。
ベンチャー企業はこの2つを武器に他企業と戦います。
この2つの武器は「小規模なチーム」だからこそ実現可能です。
大企業や中小企業は従業員を効率よく動かすために社内を組織化します。
組織化は部署を作り、規律を作ります。その組織化が企業を安定させます。
しかし、「安定」は「変化」を嫌い、変化しようとしても一度安定させたものを変化させるのは労力を必要とします。
また、変化しようとしてもその「スピード」も遅く、職員全員の周知徹底に時間を要します。
少人数のベンチャー企業は柔軟かつ迅速に変化に対応できます。

1-3.大企業に勤務する同期より早い経験ができる

 ベンチャー企業は「経験年数に関係なく、難易度の高い仕事を経験できる」という特性があります。
エン・ジャパンが行ったベンチャー企業のイメージ調査では「成長できる」「経験を積むことができる」など、「成長」「経験」に関するワードが多く挙がりました。
経営コンサルティング会社(株)XEEDのCEO波頭亮氏は「ベンチャー企業の1年目は大企業の3年目、5年目は10年目と同等の仕事内容を任せられる環境にある」と説明しています。
入社後は雑用も多くありますが、大企業に勤めた同期よりも早い段階でプロジェクトに携われることは間違いありません。

ベンチャー企業が早い段階で仕事を任せるのは「人手不足」ではなく、「人材育成」のためです。
つまり、仕事を任せるのは「人手がないから無理やり」ではなく、「効率良く人材を育成するため」です。
効率的な人材育成は「仕事を任せること」です。
仕事を任せて、より実践的な環境で指導することが指導の吸収率を高めます。
ベンチャー企業のイメージ調査の中に「新人研修がない」などの「研修」に関する不安要素もあります。
しかし、大企業のような研修は「組織の中に馴染むためのもの」です。
その内容は実践的ではないため、数日後には忘れていることもあります。

2.ベンチャー企業で活躍できる人材の条件

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ベンチャー企業で活躍できる条件は、ベンチャー企業の特性に「自分のキャリアビジョン」がマッチしているかということです。
このキャリアビジョン(将来の理想)を考えずにベンチャー企業に就職してしまうと必ず後悔します。
キャリアビジョンを考えるには「自分の置かれている現状」「長所」「短所」「価値観」など、自分を知ることが重要になります。
自分を分析し、以下の「活躍できる人材の条件」を参考にしてください。

2-1.家族やパートナーの理解を得られていること

 家族やパートナーがベンチャー企業の「働き方を理解していること」が重要になります。ベンチャー企業は多忙です。
「残業で帰れない」「自宅でも仕事する」など、仕事中心の生活になります。
特に子どもがいる家族は負担を抱えます。
「家事・育児が協力できない」「給料が低い」「休日も仕事」などの状況を理解してくれますか。
働き方改革で「ブラック企業」のような働き方は変わりつつあるも、すべて淘汰されたわけではありません。

2-2.自己研鑽能力に長けていること

 自分の能力を高めるためには「スキマ時間の利用」や「無駄な時間の是正」により学習する時間を作ることです。
平成28年社会生活基本調査ではサラリーマンの1日の平均勉強時間は「6分」です。人のスキマ時間は1日平均1時間9分です。
「成長できる環境にいること」と「自主勉強」が成長を早めます。
職場は「仕事を教えてもらう場所」ではなく、「自分の作った時間で得た知識や技術をアウトプットする場所」です。
給料をもらっている中で仕事も教えてもらうという考え方は成長を止めます。
「会社に貢献し、その結果成長する」という考えがなければ、成長できる環境に飛び込んでも成長は見込めません。

2-3.分析能力に長けていること

分析する能力は今の自分に足りない部分、さらに伸ばすべき部分を明確にします。
その明確になった課題をクリアしていくことは地道な作業ですが、一番の近道です。
また、仕事上においてできなかったことや失敗したことを分析する能力は重要なポイントになります。
その分析を繰り返すことが問題解決能力を向上させます。
何か難しい問題が生じても、問題を細分化することができ、簡単に捉えることができます。
多忙な環境下では問題を一人で解決しなければいけないことあります。
その問題を誰かに丸投げするのではなく、自分で解決できることも要求されます。

2-4.冷静であること

ベンチャー企業のような多忙な環境では「自分が何をやっているかわからない」という状況になることもあります。
心のキャパシティーを越えた時には感情的になることもあります。
そこで冷静でいられるかがポイントです。
また、自分だけではなく家族やパートナーが感情的になることもあります。
前述したように、理解を得られていたとしてもすべてが円滑に進むわけではありません。
そこで、みなさんが多忙により感情を抑えている中で、相手が感情的な態度になったときに冷静に対処できますか。
多くの方が相手の感情に合わせてぶつかり合うことが考えられます。
成長できる環境は「変化」と「スピード」が重視されます。
その環境に自分の「心」が追い付いていけるかは自分を壊さないために重要なポイントです。

3.「ベンチャー企業」と「自分」がマッチしているかが重要

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ここまで「ベンチャー企業の特性」とその「ベンチャー企業で活躍できる人材」について説明しました。
ベンチャー企業の特性である「変化」「スピード」「成長」が就職を考えている方にとって魅力的に映ることがあります。
魅力的であるがゆえにメリットを過大に捉えてしまいます。
ベンチャー企業は「変化」と「スピード」を武器にしていますが、この武器がメリットというわけではありません。
言い方を変えると、「変化とスピードしかない」ということです。
大企業と同じ戦い方をすればベンチャー企業は潰れます。
ベンチャー企業の現実は「資金がない中でコストを削減しながら激務に耐えている」ということです。
ベンチャー企業は「自分を成長させてくれる」という受け身の理由で就職すると失敗します。
まずはベンチャー企業の特性を理解しましょう。
そこで自分を分析し、将来のキャリアビジョンにベンチャー企業が必要かどうかを見極めましょう。

4.大企業に行くべきか、ベンチャー企業に行くべきか

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すべてを納得した上でベンチャー企業に就職しても、実際に働かないと見えない部分は多くあります。
その不安は「自分は大手に行くべきか、ベンチャーに行くべきか」と迷いを生みます。
「大手VSベンチャー」のような記事も見かけますが、すべては将来のビジョンが重要です。
「自分がどうなりたいか」「どうなっていたいか」なのです。

大企業に勤務することが「甘え」や「何も考えていない」ではありません。
また、大企業に勤務することが「勝組」や「将来安泰」でもありません。
人それぞれ置かれた境遇により、どちらを選択するのかは違います。
企業のメリット・デメリットを考えるよりも、「自分」を作り上げていく上で、「何が必要かを選ぶ」という感覚が必要です。

今回は「ベンチャー企業で活躍できる人材の条件」を「ベンチャー企業の特性」と交えながらご紹介しました。
ベンチャー企業で活躍するためには「周囲の理解」「自己研鑽」「分析」「冷静な心」が条件になります。
これらの条件はすべて共通点があり、「自分の置かれた状況を客観視する」ということです。
条件に近づくためには、一歩引いた視点で物事をみることから始めましょう。

【参考文献】
・「2021年卒大学生就職意識調査」 マイナビ
・「中小企業庁実態企業調査」 中小企業庁
・「就職に関する意識調査」 アデコグループ
・「平成28年社会生活基本調査の結果」 総務省統計局
・「学生の就職情報2013」 エン・ジャパン

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