【安定?不安定?】公務員として働くメリット・デメリット

公務員は「安定」ではありません。
公務員は「国民の税収の変動」で雇用や給料に影響を受けるからです。
公務員にとっての「収益」は国民が支払う税金です。
つまり、その国民の「数」や「収入」の増減が公務員の今後を左右します。
少子高齢化」「医療費・社会保障費の負担増大」「東京一極集中」など解決不可能な問題がある中で、社会情勢を無視した「昔の考え」で公務員になるのはリスクがあります。
今回は「安定」といわれている公務員のメリット・デメリットを日本が抱える問題と照らし合わせて紹介します。

1.日本の地方公務員の未来は暗い

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公務員(332.5万人)は「国家公務員(58.6万人)」と「地方公務員(273.9万人)」に分けられ、全体の80%以上が地方公務員です。
地方公務員の職務は「行政職(役所・役場の事務)」「技術職(土木・機械・電子など)」「公安職(警察官・消防官)」「資格免許職(看護師・栄養士・保健師など)」です。
その中でも「行政職」が半数を占めます。
行政職は役所・役場(地方公共団体)で書類や会計処理を行う事務を主体とし、専門性は問われません。
その他の3つの職務は専門的であるため「国家資格」「専門的知識・技術」「適正身体機能」を必要とします。
つまり、「教員になる」「警察官になる」「公務員として働く看護師になる」などの志望動機がない限り「行政職」になります。
地方公務員の半数を占める専門性を持たない「行政職」の未来は暗いです。

1-1.地方公務員の財源(税金)は減ることが確定している


「少子高齢化」「医療費・社会保障費の負担増加」「東京一極集中」など、解決不可能な問題が地方公務員に直結します。
これらの問題の根本が「人口減少」です。
内閣府の予想では日本の人口は確実に減少します。
将来を支える子どもの数が減少している上に、2025年には日本の人口で最も多い団塊の世代が75歳以上になります。
その後も高齢者の数は増加を続け、2042年には3878万人になります。
2021年の日本の人口は約1億2千万人ですが、2048年は9900万人になり、1億人を下回ります。つまり、日本人の3人に1人が高齢者です。
高齢者が増えることで問題になるのが「医療費の増加」です。
また、高齢者の生活を支える「介護費用」も増加する一方で、年金の給付額は低下します。そこで、生活困難になった高齢者生活を支えるのが「社会保障」です。
社会保障とは「疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障を行うもの」です。
簡単に言い換えると「生活に困った人は国がお金を保証します」という制度です。
この社会保障のお金の元は「国民の税金」です。
働く若者がいない中で、どのように税金を確保するのでしょうか。
地方公務員が働く役場・役所(地方公共団体)はそこに住む国民が納める税金で成り立っています。
その税金を納める若者は地方から出ていくことが予想されています。
それが「東京一極集中」です。地方の人口は約100~200万人ですが、2045年には各地方で約30万人の減少がみられます。
人口が減少した地方の企業は人口の多い東京へ拠点を変えます。
その企業と共に、地方の若者は就職のために東京へ流入し、学生も就職がしやすいように東京の学校へ在学することが予想されます。
この「少子高齢化」が専門性のない「行政職」の未来を苦しめます。
冒頭でも説明したように、公務員の財源は「国民の数」「国民の収入」です。
公務員は「国民の生活」に直結しているため、国民の「数」や「収入」に影響を受けます。
高齢者ピークを迎える2042年は2021年新卒の方の21年後であり、44歳です。
つまり、家族の生活を支えるべき年齢で公務員として雇用され続けている保証はありません。
公務員にとって、税金を払う国民がいなくなることは大きな痛手になります。

1-2.北海道夕張市の「財政破綻事件」

 2006年7月、北海道夕張市は財政破綻しました。
当時の市長が人口減少に歯止めをかけるため、夕張市を「観光地化」しましたが、その観光地化が失敗し、市は353億円の負債を抱え財政破綻しました。
財政破綻後、夕張市は地方公務員の数を263名から100名まで絞り込み、100人以上の地方公務員のリストラを行った際、残った地方公務員の基本給を30%も削減しました。
夕張市の人口は2006年には11万人でしたが、2021年2月には7386名まで減少しています。

1-3.公務員が「安定している」は昔話

みなさんは「何になるか」を決める上で、「公務員」が気になったきっかけはなんでしょうか。
マイナビが公務員志望の学生に行った「志望のきっかけ」に関する調査では、48%以上が「親の意見」でした。
また、公務員を志望する理由は67%以上が「安定しているから」でした。
つまり、どの世代も日本の公務員は「安定している」というイメージがあります。
このように公務員が安定しているという根強いイメージは日本人が政治(社会情勢)に興味がないからです。
政治(社会情勢)に興味を持ち、日本の将来を見据えれば「公務員が安定している」ということが「昔話」であることがわかります。
内閣府が実施した7ヵ国(日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)の13歳から29歳を対象とした「政治への関心」の調査があります。
政治に「関心がある」と最も多く答えた国がドイツ(70.6%)で、日本は7ヵ国の中で最も低い43.5%でした。
また、「社会をよりよくするため、私は社会における問題の解決に関与したい」というアンケートでも、「そう思う」と最も多く答えた国がドイツ(75.5%)で、日本は最も低い10.8%でした。
それに加え、2020年に発表された議会選挙投票率は世界194か国中、日本は139位です。
これらの調査から日本は世界と比較して、政治や社会情勢に関心がないことがわかります。その関心のなさが公務員は未だに「安定」と言われる要因です。

2.公務員が安定と感じるのは「変化」がないから

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「安定」とは国や企業に「寄生すること」ではなくて、何にも頼らずに「自分の力で稼げる能力を持つこと」です。
国や企業に勤め、毎月変動のない安定した収入を得ているとその環境が心地よくなります。
その環境が変化を嫌う心を作り、空気を読み合う日本人の特性を作り上げます。
この日本人の特性が国や企業に根付いてしまえば、「他人と違ったことをする」「何かを変える」という行為で肩身の狭い思いをします。
それを繰り返すことによって出る杭は打たれていきます。

地方公務員になると「何かを変える」という行為が減ります。
業務の多くは「規則」や「マニュアル」が存在しているからです。
何か問題が起こったときに、自己判断で効率化を図ることや、イレギュラーな対応をしてはいけません。
民間企業であれば、書類ひとつでもある程度の自由があるので個性を発揮できます。
つまり、地方公務員は「何かを変える」機会がなく、「個性を発揮しづらい」という環境にあります。
そして、その環境に居続けることが、学生の頃にあった「何かを変えるという熱意」を薄れさせます。

3.公務員になるメリット・デメリット

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ここまで「日本の社会情勢」や「地方公務員の現実」について説明しました。
この2つのポイントを踏まえた上で公務員になるメリット・デメリットをご紹介します。

3-1.公務員になるメリット

①競争心がないため、働きやすい

地方公務員の職務はマニュアル化されている部分が多く、成果を上げづらいのが特徴です。
そのマニュアルがあることで、誰が実行しても同じようなレベルまで落とし込むことができます。
つまり、地方公務員の職務は成果を発揮しづらく、評価をされづらいです。
また、昇給率やボーナスもある程度決まっています。
これらの要因が競争心を抑える効果となり、良好な人間関係を築きやすい環境になっています。

②学歴で「給料」と「将来の出世」が決まる

公務員は学歴で差がつきます。
高卒と大卒の初任給差は約2万ほどあり、年間にして14万の差がつきます。
在籍年数が長くなるにつれてさらに給与に差がつき、最大約5万になり、年間にして約60万です。
学歴による差は単純かつ明快であり、学生時代の努力でスタートラインを変えられます。

3-2.公務員になるデメリット

①副業禁止

公務員の最大のデメリットは「副業禁止」です。
税金を財源とする公務員は公務以外で「収益」を得ることを禁止されています。2019年4月に制定された「働き方改革」では副業を解禁しています。
その狙いは「個人が稼ぐ力をつけるため」です。
前述のように、将来の日本は人口減少に伴い財政難に陥り、不況の一途をたどります。
それがわかっている政府はできるだけ早く「自分の力で安定して稼げるようになる」ことを期待しています。
公務員にとって副業禁止は将来の自立への可能性を低下させます。

②年功序列

公務員は年功序列が強く根付いており、「仕事ができない人材」も「仕事をしない人材」も平等に扱います。
この「無駄な人材」にとって競争心の低い職場は居心地のいい環境です。
年功序列によって在籍できる職員がいることはみなさんのモチベーションを低下させることは間違いありません。

2017年の地方公務員の離職率は1.2%です。
民間企業は9.2%で、地方公務員の約10倍です。
「100人に1人しか辞めない地方公務員」は「100人に10人が辞める民間企業」と比較すると、在籍しやすい環境であることがわかります。
しかし、在籍しやすい環境が決していい環境とは言い切れません。
素質や能力に自信を持っていても、それを発揮しづらく、評価する媒体がない以上、何かを変えることは困難です。
管理職になる可能性のある約40年後に新卒の時と同じ熱意を持っていられるでしょうか。

4.将来の決め方は「何になるか」よりも「どうなりたいか」

公務員に「なりたい理由」があれば後悔のないように就職するといいでしょう。
公務員になる理由が「親の影響」や「なんとなく」であれば他の職業を検討をするのもいいかもしれません。
将来の職業を「何になるか」で考え出すと、その職業に就いた後に「何もやりたいことがない自分」を発見し、後悔することもあるでしょう。
将来の職業は「自分がどうなりたいか」で考えた時に「必要な職業」を選択することをお勧めします。

【参考文献】
・「マイナビ2022年卒公務員イメージ調査」 マイナビ
・「第1章 第1節 1 (2)将来推計人口でみる50年後の日本」 内閣府
・「平成29年度 一般職の国家公務員の任用状況調査」 人事院
・「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」 国立社会保障・人口問題研究所
・「世界の議会選挙投票率 国別ランキング・推移」 GLOBAL NOTE

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