「有給休暇の付与日数ってどのくらい?」
「有給休暇はどうやって増える?」
働き方改革により有給休暇の取得が推進されており、一定の条件を満たす労働者に対して、年間最低5日間の有給休暇取得が義務付けられています。
正社員のみならず、パート・アルバイト、派遣でも該当する場合があるので、有給休暇を適切に管理する必要があります。
そこで、本記事では、有給休暇の基礎知識や取得義務、付与される日数や計算方法などをご紹介します。
会社員として働いているなら、給与や福利厚生などが完備されているため、安心して働くことができます。会社では従業員に対して法律で定められている給与手当があります。 そのため、仕事をする際はどのような手当が付いているのか、普段から確認して[…]
有給休暇とは
有給休暇とは、心身の健康維持や生活の充実を目的に労働者に与えられる休暇です。
労働基準法にて、有給休暇の取得は労働者の権利であることが定められています。
有給休暇取得の条件を満たしている場合、就業規則で規定されていなくても取得可能です。
使用者に理由を示す必要はありません。
入職して一定期間経過すると、規定の日数の有給休暇を付与されます。
正社員のみならず、パート・アルバイトなどの不規則勤務であっても、条件を満たせば有給休暇を取得する権利があります。
派遣社員の場合、有給休暇を付与するのは雇用関係にある派遣会社です。
有給休暇付与の条件
有給休暇は以下の条件を満たす場合に付与されます。
- 雇用開始日より6ヶ月以上経過していること
- 所定労働日数の8割以上勤務していること
なお、短期契約の派遣社員の場合、契約更新を含めて6ヶ月以上経過していれば、条件を満たしているとみなされます。
有給休暇取得義務化
2019年4月より、有給休暇取得が義務化されています。
きっかけは、働き方改革関連法により、労働基準法が改正されたことです。
条件を満たした労働者に対し、1年に5日の有給休暇を取得させる必要があります。
5日間の有給休暇を取得させる義務があるのは、「年間の有給休暇の付与日数が10日以上の労働者」です。
対象の労働者が5日間の有給休暇を取得していない場合、「30万円以下の罰金」が企業側に課せられます。
そのため、企業側は有給休暇を5日間取得していない労働者に対し、業務命令として取得させることになります。
ただし、有給休暇の取得日に関しては労働者の意向も尊重するのが望ましいとされています。
有給休暇の増え方は?
一般労働者の有給休暇は、労働基準法で「入社半年後の段階で10日以上」と設定されています。
入社半年後の段階では最低10日ですが、その後、1年ごとに日数が増える仕組みになっています。
有給休暇の増え方の例を以下の表に示しています。
有給休暇の付与回数 | 有給休暇の付与日数 |
1回目 | 10日分 |
2回目 | 11日分 |
3回目 | 12日分 |
4回目 | 14日分 |
5回目 | 16日分 |
6回目 | 18日分 |
7回目 | 20日分 |
2、3回目の有給休暇付与時は1日ずつ増えます。
4回目以降は2日分ずつ増えるのが一般的です。
有給休暇の付与日数は20日が上限なので、1年当たり20日分に達した後はそれ以上は増えず、毎年20日となります。
上記は労働基準法にて定められている最低ラインです。
企業によっては最低基準よりも多く有給休暇を付与しているケースがあります。
たとえば、1回目から有給休暇を20日分付与するなどと好条件の企業もあります。
なお、最低日数を満たせば、複数回に分けて付与することも可能です。
有給休暇の最低基準、増やし方は設定されているものの、企業によって付与方式は異なります。
有給休暇の計算方法
有給休暇の計算方法は、正社員、パート・アルバイト、派遣など雇用形態によって異なります。
また、労働日数にも左右されます。
有給休暇を管理するには、正しい計算方法を把握しておく必要があります。
有給休暇の計算方法について詳しく解説します。
正社員
正社員の有給休暇の付与日数は労働基準法で定められています。
ここでの正社員は、以下の要件を満たすケースです。
- 週に30時間以上勤務している
- 週に5日以上、年間217日以上勤務している
有給休暇は入職半年後に10日分付与され、その後は継続勤務年数に応じて設定されています。
パート・アルバイト
パート・アルバイトの有給休暇付与日数は、労働日数に応じて異なるので複雑です。
たとえば、週2日~3日など不規則な労働となっているケースもあるでしょう。
週の労働時間が30時間未満の場合は、週当たりの所定労働日数に応じて有給休暇を設定します。
週当たりの所定労働日数が明確でない場合は、年間の所定労働日数をもとに算出します。
有給休暇の付与日数の詳細を見ていきましょう。
■所定労働日数が週5日(年217日以上)
所定労働日数が週5日の場合、週の労働時間が30時間未満でも正社員と同様のシステムで有給休暇が付与されます。年間5日間の有給休暇取得も義務付けられています。
■所定労働日数が週4日(年169~216日)
所定労働日数が週4日、年間169~216日の場合、半年後の有給休暇付与日数は7日間です。その後1年当たり1日ずつ増えるので、3年6ヶ月後、付与される有給休暇は10日になります。
年次有給休暇が10日に達した年より、年間5日間の有給休暇取得義務が発生します。
■所定労働日数が週3日(年121~168日)
所定労働日数が週3日、年間121~168日の場合、半年後の有給休暇付与日数は5日間です。その後、1年経過するごとに有給休暇が6日、6日、8日、9日と増えます。10日に達するのは5年6ヶ月経過後です。
■所定労働日数が週2日(年73~120日)
所定労働日数が週2日、年間73~120日の場合、半年後の有給休暇付与日数は3日間です。その後、1年経過するごとに有給休暇が4日、4日、5日、6日、7日と増えます。
■所定労働日数が週1日(年48~72日)
所定労働日数が週1日、年間48~72日の場合、半年後の有給休暇付与日数は1日間です。
年次有給休暇の取得率を高めるメリット
年次有給休暇の取得に関しては、最低基準が定められているので、基準を満たしさえすれば良いと考える企業もあるでしょう。
しかし、有給休暇の取得を積極的に推進すると、様々なメリットを得られます。
年次有給休暇の取得率を高めるメリットを把握し、有給休暇を取得しやすい環境を整えることが大切です。
詳しく見ていきましょう。
従業員のモチベーションが上がる
有給休暇をしっかり取得できる環境を整えると、心身のリフレッシュができます。
その結果、従業員のモチベーションが上がり、生産性の向上につながります。
「有給休暇取得体制を整えたら自然に業績がアップした」「有給休暇の計画付与で職場環境が改善された」というケースもあります。
有給休暇の取得に関しては、最低基準が設定されていますが、十分に取得できる体制作りが重要です。
離職率が下がる
有給休暇を取得できる体制が整っていると、離職率が下がります。
離職原因として、有給休暇をほとんど取得できないというのは、多く見受けられるのです。
離職率が下がると、結果的に採用コストや教育コストを削減できます。
また、企業のイメージが良くなり、就職先として人気が高まり、人材不足の回避や求人広告費の削減にもなります。
ホワイト企業として外部評価が高くなる
有給休暇取得率の高い企業は、ホワイト企業として外部評価が高くなりやすいです。
外部から注目されると、「優秀な人材を確保できる」「資金を調達しやすくなる」など様々なメリットがあります。
また、総合的に評価されると、日本次世代企業普及機構により「ホワイト企業認定」を受けられます。
有給休暇取得に関する注意点
有給休暇の取得義務化に伴い、スムーズに取得できない場合のトラブルが発生しています。
有給休暇の最低取得日数に満たない従業員がいる場合、企業側は罰則を受けるのです。
有給休暇の最低取得日数を満たしていない場合の対処法や、事情により有給休暇を付与できない場合の対策について解説します。
有給休暇の最低取得日数を満たしていない場合は?
有給休暇の最低取得日数を満たしていない場合、労働基準監督署から指導を受けます。
指導を受けたら、従業員が年に5日以上の有給休暇を取得できるよう、速やかに体制を整える必要があります。
指導により改善が見られれば、罰則を受けずに済む可能性が高いです。
指導後に改善されない場合は、「対象となる従業員1人当たり30万円以下の罰金」という罰則が課せられるので注意が必要です。
有給休暇を付与できない場合は?
事情により、有給休暇を規定日数取得できないケースもあるでしょう。
労働基準監督署から指導を受けても有給取得が難しい従業員に対しては、以下のような対処法があります。
- 可能な限り有給休暇を取得できる日を探す
- 社内の労働管理部門に相談する
- 提案したにも関わらず拒否されたら証拠を残しておく
- 正当な理由なく有給休暇の取得を拒否された場合は労働基準監督署に通報する
- 労働組合に相談する
- 退職が決まっている場合は最後の期間を有給休暇に当てる
従業員が有給休暇の取得を拒否した場合、労働組合や労働基準監督署へ相談することも可能です。
法的知識に基づき、適切なアドバイスをもらえる可能性があります。
システムを利用して有給休暇を管理するのがおすすめ
有給休暇取得の義務化などの影響もあり、有給休暇取得の管理が重要となっています。
有給休暇を適切に管理するため、システムを利用する企業が多くなっています。
システムでは従業員の有給休暇付与日数、取得状況などを把握できるので、計画的な有給休暇取得につながります。
また、法改正の際、アップデートなどにより改正内容が反映されるので、トラブルが発生しにくいのも魅力です。
働き方改革では、有給休暇のシステム管理は非常に有用と言えるでしょう。
有給休暇取得に関するQ&A
最後に、有給休暇取得に関するQ&Aをご紹介します。
有給休暇の取得に関しては、従業員と使用者の連携が必要です。
ぜひ、参考にしてみてください。
Q1 有給休暇の付与日数は繰り越し可能?
有給休暇取得の有効期間は2年間であることが、労働基準法で定められています。
つまり、有給休暇が残っている場合は翌年に持ち越せる仕組みとなっています。
なお、有給休暇は最大40日まで保有できます。
Q2 有給休暇の取得は拒否できる?
基本的に、有給休暇の取得は拒否できません。
有給休暇は理由を問わず取得するのが労働者の権利なのです。
有給休暇の取得日に関しても、原則労働者の希望を尊重するのが望ましいとされています。
ただし、企業によっては有給休暇の取得を避けたい時期もあるでしょう。
事業を正常に運営するため、使用者に対し、有給休暇の取得時期をずらすことを労働基準法で認めています。
有給休暇取得に関しては、正しい情報をもとに適切に対処することが大切です。
Q3 年次有給休暇の買い上げは可能?
労働基準法にて、有給休暇の付与義務が規定されているので、基本的に買い上げはできません。
有給休暇取得を請求された場合は、認める必要があります。
ただし、年次有給休暇日数が法を上回っている場合は買い上げが可能となるケースもあります。
まとめ
有給休暇の付与日数は雇用形態や労働日数によって異なります。
また、有給休暇の取得義務化に伴い、より厳密な管理が求められています。
有給休暇関連のトラブルを防ぐには、従業員の有給休暇の付与日数や取得状況を把握し、計画的な取得を進める必要があるでしょう。
システムを利用して管理するのも手段です。
有給休暇の仕組みを把握し、スムーズな管理を目指しましょう。