所得控除の種類について それぞれの対象者や控除の内容とは?

所得控除は節税に重要なので、詳しく知りたいという方は多いでしょう。

所得控除を受けるには手続きが必要となるケースもあるので、あらかじめ対象となる控除について把握しておくことが大切です。

本記事では、所得控除とはどういったものなのか、種類や内容、対象となる人について詳しくご紹介します。

所得控除とは

koujyo-shurui_1

所得控除は、所得税を算出する際に所得から差し引かれるものであり、主に以下の2つがあります。

  • 物的控除
  • 人的控除

物的控除は社会政策に関連した控除であり、医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除などが例として挙げられます。

一方、人的控除は、経済面に関連した控除であり、障害者控除や配偶者控除、ひとり親控除などです。

所得控除の種類

所得控除には様々な種類があるので、内容や計算方法を把握しておくことをおすすめします。

場合によっては、手続きをすることで還付金を得られるケースがあります。

所得控除について詳しく解説します。

(1)雑損控除

雑損控除は、自然災害などによる被害を受けた場合に、所得税や住民税を軽減するための制度です。

控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

・「資産の所有者が納税者である」「納税者と生計を一にする配偶者などの総所得金額が規定の金額以下」

・資産が「棚卸資産」「事業用固定資産」「生活に通常必要でない資産」などに該当しない

雑損控除は、以下の計算方法の多い方を採用します。

  • 「損害金額」+「災害等関連支出の金額」-「保険金等の額」-「総所得金額など」×10%
  • 「災害関連支出の金額」-「保険金などの額」-5万円

(参考:国税庁|No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)

たとえば、「災害により破損した住宅の取り壊し」「破損した家屋の修繕費」などが該当します。

ただし、日常生活に関連するもののみが対象であり、生活に必要のない資産に関しては対象外となります。

なお、雑損控除を受けるには、確定申告や災害証明など必要な手続きや書類があります。

あらかじめ確認しておきましょう。

(2)医療費控除

医療費控除は、本人もしくは同一生計の親族などの医療費を一定額支払った場合、控除を受けられる制度です。

医療費控除は、以下の計算方法を多い方を採用します。

  • 「正味の医療費」-10万円
  • 「正味の医療費」-「総所得金額など」×5%

(参考:国税庁|医療費を支払ったとき

ただし、健康診断、美容整形の費用は対象外となります。

なお、健康保持への取り組みを行っている場合に利用できる「セルフメディケーション税制」が特例としてあるので、医療費控除の代わりとして選択することが可能です。

セルフメディケーション税制と医療費控除は併用できません。
セルフメディケーション税制は、以下の方法で計算し、上限は8万8,000円となります。

「その年中に支払った特定一般用医薬品等購入費用」-「保険金などで補填される金額」-「12,000円」

医療費控除・セルフメディケーション税制を受けるには、確定申告や医療費の明細書など必要な手続きや書類があります。

(3)社会保険料控除

 社会保険料控除は、本人もしくは生計を一にする親族などの社会保険料を支払った場合に、控除を受けられる制度です。

社会保険は、以下のようなものが該当します。

  • 健康保険
  • 国民健康保険
  • 厚生年金保険
  • 国民年金
  • 国民健康保険
  • 後期高齢者医療保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 船員保険

社会保険料の控除額は、給与から差し引かれた金額も含みますが、未払いの保険料は控除の対象外です。

 (参考:国税庁|社会保険料控除

(4)小規模企業共済掛金控除

 小規模企業共済掛金控除は、小規模企業共済掛金を支払った場合、所得控除を受けられる制度です。

対象となる掛け金の例は、以下が挙げられます。

  • 心身障がい者扶養共済掛金
  • 個人型年金加入者掛金

対象は1年間に支払った金額全額となります。

 (参考:国税庁|小規模企業共済等掛金控除

(5)生命保険料控除

生命保険料控除は、納税者が以下を支払った場合に控除を受けられる制度です。

  • 生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 個人年金保険料

(参考:国税庁|生命保険料控除

なお、契約時期によって保険料の取り扱いが異なります。

 保険料の計算方法は、以下のようになります。

旧契約(平成23年12月31日以前)

年間に支払った保険料控除額
25,000円以下年間に支払った保険料全額
25,000円超50,000円以下年間に支払った保険料×1/2+12,500円
50,000円超100,000円以下年間に支払った保険料×1/4+25,000円
100,000円超50,000円

新契約(平成24年1月1日以後の契約)

年間に支払った保険料控除額
20,000円以下年間に支払った保険料全額
20,000円超40,000円以下年間に支払った保険料×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下年間に支払った保険料×1/4+20,000円
80,000円超40,000円

新契約と旧契約の両方ある場合も、上限は12万円までです。

(6)地震保険料控除

 地震保険料控除は、地震保険料を支払った場合に控除を受けられる制度です。

区分1年間の保険料の支払い合計額控除額
地震保険料50,000円以下年間に支払った保険料全額
50,000円超50,000円
旧長期損害保険料50,000円以下年間に支払った保険料全額
50,000円超50,000円
旧長期損害保険料10,000円以下年間に支払った保険料全額
10,000円超20,000円以下年間に支払った保険料全額×1/2+5,000円
 20,000円超   15,000円
地震保険料と旧長期損害保険料の両方地震保険料と旧長期損害保険料で算出した金額の合計(上限50,000円)

(7) 寄附金控除

寄附金控除は、国・地方自治体などに対して一定の寄付金を支払った際に、控除を受けられる制度です。

 寄附金控除の控除額の計算方法は、以下の少ない方を採用します。

  • 「特定寄附金の合計額」-2,000円
  • 「総所得金額など」×40%-2,000円

(参考:国税庁|寄附金控除

(8) 障がい者控除

障害者控除は、本人もしくは配偶者、扶養親族などが障害者に該当する場合に所得控除を受けられる制度です。

障害者控除の金額は、区分によって異なります。

障害者には1人当たり27万円、特別障害者には1人当たり40万円、同居特別障害者には1人当たり75万円の控除があります。

 (参考:国税庁|障害者控除

(9) 寡婦控除

 寡婦控除は、本人が寡婦である場合に所得控除を受けられる制度です。

寡婦控除の金額は令和元年以前と令和2年以後で異なります。

令和元年以前は、控除額が一律27万円なのに対し、令和2年以後は、「一般の寡婦が27万円」「特別の寡婦が35万円」となっています。

(参考:国税庁|寡婦控除

(10)ひとり親控除

 ひとり親控除は、本人がひとり親の場合に一定の要件を満たせば控除を受けられる制度であり、令和2年より適用されています。

ひとり親控除額は、35万円です。

 (参考:国税庁|ひとり親控除

(11)勤労学生控除

勤労学生控除は、本人が勤労学生である場合、一定の要件を満たせば控除を受けられる制度です。

勤労学生控除額は、27万円です。

(参考:国税庁|勤労学生控除

(12)配偶者控除

 配偶者控除は、控除対象の配偶者がいる場合、所得控除を受けられる制度です。

配偶者控除を受けるには、本人の合計所得金額が1,000万円以下である必要があります。

また、控除対象となるのは、生計を一にする配偶者の中で、合計所得金額が48万円以下の場合です。

なお、配偶者控除は、一般の控除対象配偶者と老人控除対象配偶者で異なります。

 (参考:国税庁|配偶者控除

(13)配偶者特別控除

 配偶者特別控除は、48万円を超える所得のある配偶者控除対象外の配偶者がいる場合、一定の所得控除を受けられる制度です。

ただし、本人の合計所得金額が1,000万円以下である必要があります。

なお、適用されるのは配偶者控除と配偶者特別控除のいずれかなので、重複はできません。

 (参考:国税庁|配偶者特別控除

(14)扶養控除

扶養控除は、控除対象の扶養親族がいる場合、一定の要件を満たせば所得控除を受けられる制度です。

控除対象となるのは、生計を一にする扶養親族の中で、合計所得金額が48万円以下の場合です。

 (参考:国税庁|扶養控除

(15)基礎控除

基礎控除は、本人の総所得金額に応じ、控除を受けられる制度です。

確定申告や年末調整の際に、適用されます。

ただし、総所得金額が2,500万円を超える場合は、対象外となります。

 (参考:国税庁|基礎控除

所得控除に関するQ&A

koujyo-shurui_2

最後に控除に関するQ&Aをまとめました。

節税につながる項目もありますので、ぜひ、チェックしてみてください。

Q1 所得控除を適用するには?

A 所得控除には多数の種類がありますが、どのように適用すれば良いか分からない方もいるでしょう。

一般的に、給与所得者の場合は会社が年末調整を行うので、別途手続きをしなくても基本的な所得控除を受けられるケースが多いです。

ただし、中には個人で確定申告しなければ、控除を受けられないものもあり、以下が例として挙げられます。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 寄付金控除

また、勤務先への申告漏れがあり年末調整で所得控除を受けられなかった場合、別途確定申告を行うことで控除を受けられます。

なお、給与所得者であっても別に所得がある場合、年末調整ではなく確定申告で所得控除を受ける必要があります。

 Q2 青色申告特別控除とは?

A 個人事業主の方は、青色申告を行うことで所得控除とは別に、青色申告特別控除を受けられます。

青色申告特別控除では、最高65万円の控除を受けられます。

ただし、青色申告にて65万円の控除を受けるには、「e-Taxにて申告する」「電子帳簿保存を行う」などの条件を満たさなければなりません。

また、期限があるので、期限内に青色申告承認申請書などの書類を準備する必要があります。

あらかじめスムーズに確定申告を行える環境を整えておくのがポイントです。

Q3 年末調整で対応できる所得控除は?

給与所得者は、年末調整で処理できる所得控除がどのくらいあるか気になるでしょう。

一般的に、以下は年末調整で対応可能です。

  1. 配偶者控除・配偶者特別控除
  2. 扶養控除
  3. 生命保険料控除
  4. 地震保険料控除
  5. 小規模企業共済等掛金控除
  6. 社会保険料控除
  7. 障害者控除
  8. ひとり親控除
  9. 寡婦控除
  10. 勤労学生控除
  11. 基礎控除

年末調整までに、確実に必要な書類を揃えておきましょう。

まとめ

節税するには、漏れなく所得控除を行うことがポイントになります。

所得控除が漏れないようにするには、対象となるものを把握し、必要な書類を揃えておく必要があります。

また、給与所得者の場合は年末調整で対応できるケースもありますが、そうでない場合は基本的に確定申告が必要です。

給与所得者であっても、一部確定申告をしなければ控除を受けられないものもあります。

なお、個人事業主の方が確定申告を行う場合は、節税効果の高い青色申告がおすすめです。

所得控除について詳しく知り、最大限節税しましょう。

所得控除の種類について それぞれの対象者や控除の内容とは?
最新情報をチェックしよう!