今更聞けない住民税の仕組み 所得税との違いや計算方法を徹底解説

住民税は負担になるケースが多いので、どのような仕組みで徴収されているか気になる方もいるでしょう。
住民税の仕組みを把握しておくと、住民税が高くなった場合や年収不変で税額が異なる場合などに納得できます。

また、住民税の支払いが困難な場合、状況によっては猶予もしくは減免を受けられるケースもあります。

本記事では、住民税について、仕組みや所得税との違い、計算方法などを解説します。

住民税とは?

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住民税とは地域社会を営むための費用であり、居住している道府県と市町村により課税されます。
住民税には、以下の2つがあります。

  • 道府県民税
  • 市町村民税

それぞれ、均等割と所得割があります。

所得割は、前年の所得により算出されるものであり、均等割は一定額で課税される仕組みです。

所得割の標準税率と均等割額を以下に示しています。

・道府県民税

  • 所得割:4%
  • 均等割:1,000円

・市町村民税

  • 所得割:6%
  • 均等割:3,000円

道府県によっては均等割に上乗せ徴収しているケースがあります。

住民税の徴収方法

住民税の徴収方法は、所得を得る方法によって異なります。
住民税の徴収方法について解説します。

普通徴収

普通徴収は、個人事業主やフリーランスなどを対象となした徴収方法です。
支払い方法は、一括もしくは分割から選択できます。

普通徴収の流れは、以下のようになっています。

  • 2月~3月:前年分の所得を確定申告し納税
  • 5月~6月:住民税決定通知書兼納付書を受け取る
  • 6月末~翌年1月末:一括もしくは分割にて納税

普通徴収の場合は、個人で納税することとなります。

特別徴収

特別徴収は、サラリーマンを対象とした支払い方法です。
給与から天引きされるので、個人で支払い手続きを行う必要はありません。ただし、納税方法は源泉徴収のみとなっています。

住民税の計算方法

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住民税の計算は、以下のような流れで行います。

  • 総所得金額を算出する
  • 所得控除できる金額を確認する
  • 課税所得・所得割を算出する
  • 税額控除を算出する
  • 均等割額を足す

詳しく解説しますので、参考にしてみてください。

総所得金額を算出する

総所得金額は、合計所得金額から損失の繰越控除を差し引いて算出します。
1月1日~12月31日の収入が対象であり、経費などを差し引きます。

総所得金額は、確定申告した場合、前年度の確定申告書を見ることで確認できます。

給与所得者は、会社から源泉徴収票を受け取り、確認しましょう。

所得控除できる金額を確認する

住民税の計算では、所得控除が可能となっています。

あらかじめ控除できる項目を把握しておくとスムーズです。

たとえば、以下のような項目で、控除できます。

  • 基礎控除
  • 医療費
  • 社会保険料
  • 生命保険料
  • 地震保険料
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除

課税所得・所得割を算出する

課税所得額は、総所得金額から所得控除額の合計を差し引いて算出します。

税額控除前の所得割額は、課税所得額に税率(10%)をかけて算出します。

税額控除を算出する

税額控除後の所得割額は、税額控除前の所得割額から税額控除の額を差し引いて算出します。

たとえば、配当控除や寄附金税額控除などが税額控除の対象です。

なお、住民税の額は、税額控除後の所得割額に均等割額を足して算出します。

年収が同じでも住民税が異なる理由

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住民税の計算方法でもお伝えしましたが、住民税を算出する際は、控除できる金額を差し引くこととなっています。
差し引く控除額が異なるので、住民税にも差が生じます。

たとえば、扶養家族の有無など様々な要素で住民税は異なります。
年収が同じでも住民税が異なる理由について詳しく解説します。

扶養家族の有無で住民税が異なる

所得が同じでも、扶養家族の有無により住民税が異なります。
また、所得によっても左右されます。

扶養家族と住民税の関連について把握しておくと良いでしょう。

保険料の支払い額が住民税に影響する

住民税に関連する保険料は、以下が挙げられます。

  • 生命保険料控除
  • 地震保険控除

生命保険料控除は最大7万円、地震保険控除は最大2万5千円です。
保険料の支払い額により、住民税の減額が可能です。

4~6月の給与額により社会保険料の金額が異なる

社会保険には、以下があります。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金
  3. 雇用保険
  4. 介護保険

健康保険、厚生年金、介護保険は、4~6月の給与をもとにした標準報酬月額を利用して算出します。
年収が同じであっても、4~6月の給与額は異なるので、社会保険料に差が生じます。

なお、社会保険料は、住民税の控除の対象となるので、住民税にも影響することとなります。

社会保険の算出方法

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  1. 健康保険:標準報酬月額に健康保険料率をかけて算出する。保険料は年間固定。    
  2. 厚生年金:標準報酬月額に厚生年金保険料をかけて算出する。保険料は年間固定。
  3. 雇用保険:総支給額に雇用保険料率をかけて算出する。保険料は毎月異なる。        
  4. 介護保険:標準報酬月額に介護保険料率をかけて算出する。保険料は年間固定。

4~6月の給与額

標準報酬月額は、4~6月の平均給与で決まります。

4~6月の平均給与は、以下のような要素で変動します。

  • 手当て
  • 残業代
  • 通勤費…など

4~6月の平均給与が、9月~翌年8月までの1年間の社会保険料に影響します。
4~6月の給与が低いほど、社会保険料は安くなります。

標準報酬月額に4~6月の平均給与が関与することを把握しておくと、残業を減らすなどの対策も可能です。

住む場所により住民税が異なるケースがある

住民税を算出する際、均等な金額を納税する均等割があります。
均等割では、地域により追加徴収額があるので、住民税の額が高くなるケースがあります。

住民税が高くなる理由

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住民税が前年度より高くなった場合、疑問に感じるケースがあるでしょう。
住民税が高くなることには理由があります。詳しく解説しますので、参考にしてみてください。

所得の増加

住民税には、均等割と所得割があります。
均等割は所得に関係ないので、基本的には一律です。
一方、所得割は前年の所得により変動します。
住民税が高くなった場合、前年の所得が増えた可能性があります。

例として、以下が挙げられます。

  • 昇級により基本給が上がった
  • ボーナスを受け取った

住民税は前年の所得により算出されるので、前年の所得が増えた場合は負担が大きくなることを把握しておきましょう。

利用可能な控除が少ない

住民税を算出する際は、所得から控除を差し引きます。
そのため、利用可能な控除が少ないと、住民税が高くなります。

住民税が高くなった場合は、何らかの原因で控除の対象から外れた可能性があります。
所得の変動がないにも関わらず住民税が高くなった場合は、各種控除を確認してみましょう。

住民税の納付が困難な場合の対処法

事情があり住民税の納付が困難な場合、住民税の猶予もしくは減免を受けられるケースがあります。
ただし、期間や条件などがあるので、居住地の市区役所もしくは町村役場に相談して対応を確認する必要があります。
住民税の納付の猶予・減免について解説しますので、参考にしてみてください。

住民税の徴収が猶予されるケースあり

事情があり住民税の納付が困難な場合、徴収が猶予されるケースがあります。

たとえば、以下のような項目に該当する場合は、猶予を受けられる可能性があるので相談してみると良いでしょう。

  • 財産が震災の被害を受けた場合
  • 財産の盗難にあった場合
  • 納税者が疾病もしくは負傷した場合
  • 法人が事業を営めなくなった場合
  • 法人が大きな損失を受けた場合

猶予されるかは状況によっても異なるので、居住地の市区役所もしくは町村役場に相談が必要です。

住民税が減免されるケースあり

納期限に達していない住民税があり納税が困難な場合、状況によっては住民税が減免されるケースがあります。
たとえば、以下のような項目に該当する場合は減免される可能性があります。

  • 生活保護を受けている
  • 事情があり無職となり生活を営むのが困難
  • 災害・盗難などにより財産に大きな損失がある場合
  • 疾病などの治療で高額な出費が発生し生活が困難な場合
  • 納税者が課税期日の翌日以降に死亡した場合

住民税の減免に関しても状況により対応が異なるので、居住地の市区役所もしくは町村役場への相談が必要です。

住民税に関するQ&A

住民税に関するQ&Aをまとめました。
気になる方は、参考にしてみてください。 

Q 前年度に収入が無い場合の住民税はどうなる?

A
前年度無職の方や新入社員など、前年度に収入がない場合の住民税が気になる方もいるでしょう。
前年度の所得がない場合、住民税は発生しません。
新入社員の場合、2年目の6月より住民税を支払うことになります。
住民税は、1年目の4月~12月の給与所得をもとに算出します。
前年度に収入が無い場合住民税が発生せず、結果的に手取りが多くなることを把握しておきましょう。

Q 退職した場合、住民税はどうなる?

A
退職した場合、住民税の支払いが発生するか気になる方もいるでしょう。
退職した場合も、前年の所得より住民税が算出されます。
翌年職が無くても前年に収入がある場合は、住民税の支払いが必要です。
翌年扶養に入った場合も、同様に住民税が発生します。
なお、退職した場合に受け取った退職金も、住民税の対象となります。

Q 住民税の確認方法は?

A
住民税は、住民税決定通知書で確認できます。
住民税決定通知書は、普通徴収の場合は納税者本人宛に、特別徴収の場合は事業者宛に送られます。
なお、特別徴収の場合は、本人用と事業者用いずれも事業者へ送られる仕組みとなっています。
住民税決定通知書は、自治体により形式が異なるケースがありますが、見方はほとんど同じです。

住民税決定通知書では、以下を確認できます。

  • 総所得
  • 所得控除
  • 課税所得
  • 扶養親族の数
  • 所得割の計算
  • 均等割の計算
  • 納付額(6月~翌5月までの月々の納付額)

Q 住民税を滞納した場合は?

A
住民税を滞納した場合は、税額に加え延滞金が発生します。
区市町村から督促状が届くので、すぐに対応する必要があります。
督促状が届いたら、まず、担当部署へ連絡しましょう。
督促状が届いているにも関わらず滞納していると、最悪の場合財産差し押さえなどのリスクがあります。
事情があり納付が困難な場合も、まずは、連絡するようにしましょう。

まとめ

住民税は地域社会を営むための費用であり、道府県民税と市町村民税があります。
それぞれの算出方法、徴収方法を把握しておくと参考になるでしょう。

住民税は様々な要素により異なるので、年収が同じでも住民税が異なるケースがあります。
たとえば、所得の変動や利用可能な控除により、前年度よりも納税額が増える可能性もあります。

なお、住民税は納税が困難な場合、猶予・減免の対象となるケースがあるので、生活に支障を来す場合は居住地の市区役所もしくは町村役場へ相談してみると良いでしょう。

住民税の仕組みや所得税との違い、計算方法などについて把握し、住民税に関する疑問を解消しましょう。

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