就労支援サービスとは、様々な理由によって働くことが難しい人々に対して、就職し働くことができるようにサポートするために制定された制度になります。
- 長く働き続ける自信が無い
- 体調が安定しないため働けるかどうか分からない
- 就職を考えているが何から手をつければいいのか知りたい
- 就職しようとしているがなかなか就職先が決まらない
障害や疾患を抱えている人など、働くことが難しい人の理由とは人それぞれです。
そういった人達に応じて、個別具体的に様々なサポートをすべく制定された制度が就労支援サービスになります。
そこで今回の記事では、就労支援サービスとは具体的にどういったものなのか、他の福祉サービスとの違いなどについても併せて解説していくので、ぜひ参考にして下さい。
「ハローワーク」というと、「新卒や転職に迷ったときに就職のために求人を探しに行く」「失業保険の給付手続きをしてくれる場所」そんなふうに思っている人が多いと思います。でも、ハローワークは「働く意欲のある人のために支援を行う場所」なので、仕事[…]
就労支援とは
就労支援とは障害や疾病を抱えた人であっても、問題なく社会に参加することができるように、就職などに必要な様々なサービスを行なう支援制度です。
就労支援は、就労移行支援ともいい、障害者総合支援法に基づいて定められた行政のサービスの1つになります。
就労支援サービスは、以下の5つの目的・趣旨を持って国により制度が制定されました。
- ステップアップをする中間地点
- 職業適性などに関するアセスメント
- 障害のある人の就労意欲を高める
- 最適の就職先を見つけるためのマッチング
- 継続して働くためのフォローアップ
それぞれどういった内容なのか、以下で詳しく見ていきましょう。
ステップアップをする中間地点
障害や疾病を持っている方は、通常福祉施設などで働くために必要な様々なことを学ぶことになります。
もっともあくまでも学校的なものにとどまってしまうので、どうしても本当の職場で働いている際に必要な知識や緊張感と言うのを感じることができません。
そこで就労支援という中間地点を設けることによって、障害や疾病を有している方でも、よりスムーズに働くことができるようになる環境が必要となっていました。
こういった中間地点として、働く準備ができるようにと制定された制度が就労支援サービスになります。
職業適性などに関するアセスメント
就労支援サービスでは、実際に働くことになる将来に向けて、職場やそこで働く人々に必要な支援を明らかにする役割も果たしています。
就職体験や訓練だけではなく、実際に働く際に何が問題になるのかを明らかにするアセスメント機能も有しているのです。
障害のある人の就労意欲を高める
障害や疾病がある人だとしても、自分はどういった特徴を有しており、どんな職業や業務に適しているのかを理解して、働くことに対して意欲や意識を高める必要があります。
特に精神障害や発達障害を有している人は、就労支援サービスを通じて得た体験によって、自分がどういった人間なのか自己理解をすることができるのはもちろんのこと、就労意欲を高めることが可能です。
また実際に働くことになるであろう将来において、職場に適応するための得がたい経験を得ることができます。
最適の就職先を見つけるためのマッチング
最適の就職先を見つけることに関しては、基本的にハローワークや障碍者就業・生活支援センターなどが担う役割になります。
もっとも就労支援サービスをはさむことによって、より最適の就職先を決めるきめ細かいマッチングというのが可能です。
継続して働くためのフォローアップ
就労支援サービスにおいては、原則働き始めてから6ヶ月定着することが目標とされています。
もっとも実際には、6ヶ月という短い期間で定着のための支援のニーズがなくなるというわけではありません。
ハローワークや障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所など様々なところが連携して、定着の為のフォローを行なっていく必要があるでしょう。
継続して働くためのフォローアップをする役割としても、就労支援サービスは重要な役割を果たしています。
就労支援サービスが行なっているサポートの具体的な内容
就労支援サービスが行なっているサポートに関して、具体的などういったものがあるのでしょうか。
以下でサポートの具体的な内容について詳しく解説していきます。
サポート① 就職に関する相談
就労支援サービスを利用する人に関しては、それぞれ違った目的を有しています。
- 今すぐにでも就職したい
- 今までとは違った種類の仕事に挑戦したい
- 体と相談しながら都合のつきやすい仕事をしたい
こういった様々な目的を抱えた人達に対して、個別具体的に最適の計画を立てながら相談を行なっていくことになります。
サポート② 就職活動の準備
就職に関して必要になる知識や、要求されるスキルを学ぶことになります。
特別に用意された講座やセミナーを通じて、就職に向けて様々な準備を行なっていくことで、自分では思いもよらなかった職業への適正などを見つけることも可能です。
また生活支援や病院のデイケアと並行しながら準備を進めることも可能であり、柔軟に自分のペースで就職に関する準備を進めていくことができます。
サポート③ 職場・職業体験
就職の為の準備を行なったら、次に実際の職場に赴き働くことになります。
ここでは様々な職業を体験することも可能であり、この体験を通じて自分の適性を学びつつ、就職に向けて特に必要な準備などを並行して行なうことが可能です。
サポート④ 就職活動
ここまでの段階で就職活動に必要な準備を行い、実際の職場で自分の適性や必要なことを学んだら、就職活動をすることになります。
就職を希望する企業への応募や面接など、やることは数多くあるでしょう。
スムーズに就職活動を進めることができるように、就労支援サービスでは様々なサポートなどを行なうことになります。
サポート⑤ 就職後のサポート
実際に就職できたからはい終わりというわけではありません。
就職後長い間定着することができるかというのも非常に重要であり、定着の為の様々なサポートも行なわれています。
実際に働き始めてから感じた様々な課題を見つめなおし、面談などを通じてどのように解決していくか探っていくなど、様々な就職後のサポートが行なわれているのが特徴です。
就労支援サービスを利用するに当たっての気になるポイント
就労支援サービスに関して詳しい内容を紹介してきましたが、実際に利用するに当たって料金や期間などは決まっているのか気になるという方も多いのではないでしょうか。
そこでそういった就労支援サービスを利用するに当たっての気になるポイントについて、以下で詳しく見ていきましょう。
就労支援サービスの利用料
就労支援サービスに関しては、国が提供しているサービスということもあり、利用する方の9割が利用料は0円になっています。
もっとも世帯の収入に応じて費用がかかる場合もあるので、それぞれ以下に表としてまとめました。
就労支援サービスを利用しようか考えている方は、参考にして下さい。
世帯(本人+配偶者)の収入状況 | 負担することになる金額 | 目安となる収入 |
生活保護受給世帯もしくは 市町村民税非課税世帯 | 0円 | 給与収入の場合概ね年収100万円以下 障害者は給与収入の場合概ね年収200万円以下 |
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 | 年収が概ね600万円以下 |
上記以外 | 37,200円 | 年収が概ね600万円を超える |
就労支援サービスに関しては、原則利用者が利用料の1割を事業所に対して支払う決まりになっています。
もっとも上記の表でも紹介したとおり、収入によって負担する上限額というのが決まっていることもあり安心して利用することができるでしょう。
自分がどれくらい負担しなければいけないのかは、市区町村の障害福祉課などで確認することができます。
就労支援サービスの利用期間
就労支援サービスの標準利用期間は2年間となっています。
もっともこれは就職するまでの期間となっており、その後無事に長期間定着できるまでは、継続して支援を受けることが可能です。
1度就職をして上手く慣れることができなかったとしても、お住まいの市区町村と相談をして、再度就労支援サービスを受けるということもできるので、積極的にサービスを利用しましょう。
就労支援サービスを利用するために必要なもの
就労支援サービスを利用するためには、障害者福祉サービス受給者証が必要です。
この障害者福祉サービス受給者証は、お住まいの市区町村における担当窓口にて発行され、申請の際には医療機関で発行される診断書や障害があるか確認できる書類の提出が必要になります。
障害者手帳に関しては必須ではありません。
就労支援サービスと他の福祉サービスの違い
就労支援サービス(就労移行支援)には、以下のような似た福祉サービスというのが存在します。
- 就労継続支援(A型/B型)
- 就労定着支援事業
それぞれどういった違いがあるのか、以下で詳しく解説していきます。
就労支援サービスと就労継続支援(A型/B型)の違い
就労支援サービスに関してはここまで詳しく解説してきましたが、よく文字面が似ている制度として就労継続支援(A型/B型)というものがあります。
就労継続支援というのは、現在一般企業に就職するのが難しい障害者の方々に対して、働く上で必要となってくる様々なスキルを身に付けたり、実務の機会を与えたりする職業訓練を意図した制度です。
就労継続支援A型とB型で、利用できる「障害」に関しては特に違いはありません。
就労支援サービスとどういった点が違うのか、A型とB型では何が異なるのか、以下に表としてまとめたので参考にして下さい。
就労支援サービス | 就労継続支援(A型/B型) | |
対象となる人 | 障害や疾病がある人 | 就職するのが難しいまたは不安がある障害者の方 |
制度の趣旨 | 就職・独立に関する支援 | 障害者に対して理解のある職場での就労とスキルの習得 |
利用できる期間 | 最長24か月 | なし |
賃金 | なし | あり |
次に就労継続支援A型とB型それぞれの違いについてです。
A型 | B型 | |
年齢に関する制限 | 65歳(ただし例外あり) | なし |
雇用契約 | あり | なし |
利用している人数 | 約6.9万人 | 約24万人 |
月給の平均 | 74,085円 | 15,603円 |
就労支援サービスと就労定着支援事業の違いについて
就労定着支援事業とは、ここまで紹介してきた就労支援サービスの中でも行われている「職場に定着する」ということをさらにサポートするために行われている福祉サービスになります。
就労支援サービスの制度が制定されたことによって、少しずつ障害者の方達も社会の一員として自立し働くことができるようになってきました。
もっとも職場に定着するというのは、障害者の方にとって様々な支援などが必要になるため、非常に困難な面があるということは否定できません。
そのため就労支援サービスで行われる職場定着のサポートが終了した後でも、定着のための様々な支援が最大3年間受けることができるのが就労定着支援事業になります。
実際に働いている人との面談を行い、職場に定着するための様々なアドバイスをする事はもちろんのこと、働いている企業と連絡を取り様々な相談を行うことによって、定着にあたって生じる問題の解決などを探っていくのが主なサービスの内容です。
まとめ 就労支援サービスを積極的に利用して自分に最適の職を見つける
今回紹介してきたように就労支援サービスというのは、障害者の方が自分に最適の職業を見つけ定着し働き続けることはできるようにサポートするために制定された制度になります。
就職に不安を抱いているという場合でも、自分に適している職業を見つけるきっかけとなるので、興味を抱いたら気軽に相談してみるのがおすすめです。
就職したいと考えているあなたの一番の味方になってくれるのが、就労支援サービスになるので、気になった方は積極的に活用しましょう。