国民年金基金は第1号被保険者が対象であり、将来の年金受け取り額を増やすために重要です。
ただし、国民年金基金には加入条件や仕組みに関し、特徴的なポイントがあるので、把握しておく必要があります。
メリット・デメリットを把握した上で、加入すべきか検討することをおすすめします。
本記事では、厚生年金と国民年金基金の違いについてや、国民年金基金の基本的な仕組みや加入するための条件などをご紹介します。
国民年金基金とは
国民年金基金は、国民年金の上乗せとしての位置づけの年金です。
加入は任意であり、対象は第1号被保険者です。
通常、サラリーマンは国民年金と会社の厚生年金に加入します。
将来的に、国民年金と厚生年金由来の年金を両方受け取ることになります。
自営業者は会社に所属していないので、厚生年金はありません。
そのため、将来受け取れるのは、国民年金由来の年金のみとなります。
将来的な年金格差を解消するため導入されたのが、国民年金基金制度です。
国民年金基金制度を利用すれば、サラリーマンとの年金格差を埋めることができます。
あくまで任意の保険なので、加入するかは個人の自由となっています。
国民年金基金には、以下の2つのタイプがあります。
- 地域型
- 職能型
地域型基金は各都道府県にあり、各県の第1号被保険者が加入できます。
一方、職能型基金は、歯科医師、税理士、漁業者など、特定の職種の第1号被保険者が対象となります。
国民年金基金について詳細を把握しておこう
国民年金基金に加入する際は、加入後の失敗を防ぐため、あらかじめ情報を把握しておくことが大切です。
国民年金基金に関し、加入資格や資格喪失になる要件、受取額や受け取り期間など、詳しく解説しますので参考にしてみてください。
国民年金基金への加入資格
国民年金基金への加入できるのは、以下のいずれかの条件を満たす方です。
- 日本国内の20歳以上60歳未満の第1号被保険者
- 60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している
- 海外在住で国民年金に任意加入している
ただし、以下の場合は加入できません。
- 国民年金保険料を免除されている
- 農業者年金の被保険者
なお、「国民年金の第1号被保険者」というのが必須条件なので、国民年金の第1号被保険者でなくなった場合は国民年金基金への加入資格もなくなります。
国民年金基金の資格喪失になる要件
国民年金基金は任意に脱退することはできないですが、加入資格を失うと強制的に脱退となります。強制的に資格喪失になる要件は以下の通りです。
- 第1号被保険者でなくなった場合
- 海外転居した場合
- 被扶養配偶者になった場合
- 職能型基金加入中に仕事をやめた場合
- 農業者年金に加入した場合
- 国民年金保険料で免除を受けた場合
- 国民年金の任意加入被保険者ではなくなった場合
- 60歳になったとき
- 60歳以降に加入した場合は65歳になったとき
- 亡くなった場合
国民年金基金に加入する場合は、資格喪失になる要件についても把握しておくと安心です。
国民年金基金の受取額は月々の掛金により決まる
国民年金基金の受取額は、月々の掛金で決まります。
国民年金基金の1口目は、終身年金として加入する必要がありますが、2口目以降は確定年金を選択することも可能です。
2口目以降に確定年金を選択した場合は、年金受給期間は短縮となります。
ただし、国民年金基金は途中で脱退できないので、60歳になるまで掛金を継続して支払わなければなりません。
月々の掛金を調整しつつ、継続することとなります。
加入時に将来の受給額が決まるのが利用しやすさのポイントです。
国民年金基金を受け取れる期間
国民年金基金は、支給開始が65歳であり、死亡するまで受け取れます。
口数単位の加入であり、複数の選択肢があります。
1口目は終身年金であり、2口目以降で希望の種類を選択できる仕組みです。
支給開始が60歳で、期間が決まっているタイプも複数あります。
国民年金基金と厚生年金との違い
国民年金基金と厚生年金は混合されるケースが多いです。
国民年金基金と厚生年金との違いについてご紹介しますので、参考にしてみてください。
保険料負担
国民年金基金と厚生年金とでは、保険料負担額が異なります。
厚生年金では、企業が保険料を半額負担してくれるので、負担が小さくなります。
掛金の違い
厚生年金と国民年金基金とでは、掛金の決め方が異なります。厚生年金は給与により決まります。一方、国民年金基金は自由に口数を選べます。
支給金額
国民年金基金は、支給金額が加入する段階で決まっているのが特徴です。
一方、厚生年金の場合は、加入段階で支給金額は確定していません。
将来の経済状況に応じて変動する仕組みです。
国民年金基金と混同しやすい年金制度
国民年金基金と混同しやすい年金制度として、国民年金や確定拠出年金があります。
それぞれの違いについて解説します。
国民年金基金と国民年金の違い
国民年金は第1号被保険者のみならず、全ての国民に加入が義務付けられている基礎年金です。
第1号被保険者には厚生年金に該当する上乗せがありません。
付加年金はあるものの保険料が少なく、将来の年金受け取り額も十分ではありません。
そこで、別途任意保険として準備されているのが国民年金基金です。
つまり、国民年金基金は第1号被保険者のみを対象とした任意保険ということになります。
なお、付加年金と国民年金基金は重複できないこととなってます。
第1号被保険者は国民年金基金に加入することで、将来の年金受け取り額を増やすことができます。
国民年金基金と確定拠出年金(iDeCo)の違い
私的年金には、国民年金基金のほか、確定拠出年金もあります。
確定拠出年金には、以下の2つがあります。
- 企業型DC
- 個人型DC(iDeCo)
国民年金基金は第1号被保険者を対象としていますが、iDeCoには20歳以上60歳未満のすべての方が加入できます。
iDeCoも当初は国民年金の第1号被保険者を対象としていましたが、ニーズがあり対象が広げられています。
iDeCoは、国民年基金連合会が実施しています。
国民年金基金のメリット
国民年金基金には、将来の年金格差を是正する役割があります。
自営業もしくはフリーランスの方でも、将来の年金の支給額を増やせます。
老後資金の悩みを解消できるでしょう。国民年金基金のメリットについてご紹介します。
税制上のメリット
国民年金基金には、税制上のメリットがあります。
国民年金基金への掛金は社会保険料控除の対象となります。
確定申告を行えば、所得税と住民税の負担を減らせるでしょう。
国民年金基金は老後の資金対策のみならず、節税効果にも関係します。
同一生計の人の掛金も所得控除の対象となるので、負担した場合はより節税効果を得られます。
一生涯受け取れる
国民年金基金は、一生涯受け取れる終身年金です。
老後生活に備えたい方にとって魅力的でしょう。
また、手元にあるわけではないので、ついつい使い切ってしまわないのもポイントです。
掛金額を自分で決められ年金額が確定している
国民年金基金は、掛金額を自分で決められ、年金額が確定しています。
加入時点で決めた口数を変えなければ、加入時の掛金が払込期間終了まで変わらない仕組みです。
また、加入時点で将来受け取れる年金額が分かるので、安心感があります。
自由にプランを決められる
国民年金基金に関しては、自由にプランを決められるのが魅力です。
種類は7タイプあり、口数単位でアレンジできます。
ライフプランにあわせ、以下の要素を自由に設定できます。
- 掛金額
- 受取年金額
- 受取期間
途中でプランを変えたい場合は、加入後に口数を変更するなど調整できます。
1口目は減口不可などの注意点もあるので、あらかじめ確認が必要です。
万一の場合に一時金を受け取れる
国民年金基金には、タイプにもよりますが、保証期間があります。
年金支給開始後保証期間中に亡くなった場合は、遺族が一時金を受け取れるという安心感があります。
一時金は、加入時年齢や残りの期間などの要素により異なるので、あらかじめ確認が必要です。一時金は課税対象とならないのもポイントです。
国民年金基金のデメリット
国民年金基金には様々なメリットがありますが、押さえておくべきデメリットもあります。
加入後に後悔しないよう、あらかじめ確認しておきましょう。
任意で脱退できない
国民年金基金に加入後は、任意で脱退できない仕組みとなっています。
加入条件を満たさなくなった場合は脱退となりますが、それまでの掛金が将来受け取る年金に反映されます。
違約金支払いにより中途解約するなどの仕組みはありません。
ただし、経済的に継続が厳しくなった場合は、口数を減らすことが可能です。
口数を減らしても厳しい場合に中断することもできますが、未納扱いになり、将来受け取る年金額に影響します。規定を満たせば未納分を追納することも可能です。
インフレに対応できない
国民年金基金では、インフレに対応できません。
そのため、物価が上昇した場合、お金の価値が下がり、打撃を受ける可能性があります。
インフレ対策をしたい場合は、インフレに強い変動金利タイプの商品を利用するのも手段です。
自営業者は国民年金基金とiDeCoを併用可能
自営業者は、国民年金基金とiDeCoを併用可能です。
いずれも掛金を自分で調整できるので、両方加入し、運用状況を確認しつつ調整することも可能です。
ただし、掛金の上限は両方合わせて月額6万8,000円となっています。
国民年金基金には満額で加入するのがお得
国民年金基金には、満額の6万8000円で加入するのがお得です。
というのも、国民年金基金では、掛金全額が所得控除の対象となります。
また、一般的に掛金以上に戻ってくるのが魅力です。
国民年金基金は、節税しつつ老後対策できる制度です。
自営業者として順調に稼いでいる場合は節税対策に悩むケースが多いので、満額で掛金を支払い、所得控除を受けるのが良いでしょう。
一方、売上が落ちて支払いが負担になった場合は、掛金を減額するなどの調整が可能です。
最低掛金以下にはできないものの口数の調整はできるので、満額で加入し状況に応じて変えることをおすすめします。
まとめ
国民年金基金は国民年金の上乗せとしての位置づけであり加入は任意ですが、将来の年金受け取り額を増やすための重要な制度です。
国民年金基金制度を利用すれば、サラリーマンとの年金格差を埋めることができます。
ただし、国民年金基金への加入には条件がありますし、一度加入すると任意で脱退できません。
掛金の仕組みや将来の受給額などの情報を把握した上で、加入すべきか判断する必要があるでしょう。
なお、国民年金基金のみならず、確定拠出年金を利用するのも手段です。
状況に応じて最適な加入方法が異なるので、将来のことも考慮し検討することが大切です。
厚生年金と国民年金基金の違いや、国民年金基金の基本的な仕組み、加入するための条件などを考慮し、最適な年金対策を行いましょう。