「法人税と一般的な税金はどう違う?」
「課税対象となる法人税はどのようなものがある?」
法人税と一般的な税金には、算出方法や控除など様々な違いがあるので、特徴を把握しておくと理解が深まります。
本記事では、法人税と一般的な税金についての違いや法人のみの課税対象、相談窓口などについて解説します。
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法人が納める税金の種類
法人が納める税金は多数あり、納税方法は以下の2つに分けられます。
- 申告納税方式
- 賦課課税方式
「申告納税方式」は、納税者が税額を算出して申告する方法です。
「賦課課税方式」は、納税者が通知を受け取り、納税額を確認して納税する受け身の方法です。
それでは法人が納める税金の種類についてご紹介します。
法人税
法人税は、以下の2つに大別できます。
- 法人税・地方法人税
- 法人事業税・法人住民税
法人税・地方法人税は国税、法人事業税・法人住民税は地方税という位置づけです。
法人住民税
法人住民税は、以下に大別できます。
- 法人都道府県民税
- 法人市民税
法人住民税は、申告納税方式となっています。
法人住民税とは、会社を登記している都道府県、市町村に対して納める税金です。
法人住民税の構成は、法人税割と均等割となっています。
自治体によって税率は異なるので、確認が必要です。
法人税割額は、「法人税額× 税率」で算出できます。
均等割は、資本金額、従業員数などにより異なります。
法人事業税
法人事業税は、都道府県に納める税金です。
課税標準は、以下の3つがあります。
- 所得割
- 付加価値割
- 資本割
付加価値割と資本割は、資本金が1億円を超える法人が対象となります。
法人事業税は、「課税標準額×税率」で算出され、法人の種類や資本金額などにより異なります。
消費税
消費税は、以下に大別されます。
- 消費税
- 地方消費税
消費税は国税、地方消費税は地方税です。
消費税は消費者が負担するので、法人が負担するわけではありません。
消費税には、以下の算出方法があります。
- 税込方式
- 税抜方式
税込方式の場合、各種費用を決算書に記載する際、消費税を含めます。
仕入費用も同様なので、消費税も費用として計上する形になります。
一方、税抜方式の場合、決算書には消費税なしの金額を記載するので、消費税は費用としての扱いになりません。
法人税の算出方法
法人税の算出方法は、以下の通りです。
法人税額=課税所得×法人税率-控除額
課税所得=益金-損金
法人税額は課税所得に法人税率をかけて算出し、課税所得は売上から経費を差し引く仕組みです。
適正に損益計算することを目的としている会計と、適切な課税を目的としている法人税法は目的が異なるので、費用が一致しないケースもあります。
なお、法人税における税率は、実効税率を用いるのが一般的です。
実効税率とは、実質の所得税負担率です。
資本金の額によって、税率が軽減されるなど税制優遇を受けられるケースもあります。
法人税を納付しない場合のデメリット
法人税の納付は義務であり、期限までに納付できなかった場合、ペナルティがあります。
法人税は法人側が算出し、申告・納付しなければならないので負担が大きいですが、遅れないよう注意が必要です。
また、法人税は事業年度ごとに算出する仕組みであり、期限は事業年度終了日の翌日より2か月以内です。
法人税を納付しない場合のデメリットについて解説します。
延滞税を課せられる
法人税の納付期限を過ぎた場合、延滞税を課せられます。
延滞税は納付期限の翌日より納付が完了するまでかかるので、可能な限り早めの対応が必要です。
延滞税の割合は年により異なるので、確認しておきましょう。
なお、2ヶ月を経過しているかしていないかにより、延滞税の税率が異なり、2ヶ月を過ぎると、延滞税も高くなります。
納付期限を過ぎた場合、納付書を添付する必要があります。
無申告加算税を課せられる
法人税は申告して納税する仕組みであり、期限を過ぎると無申告加算税を課せられます。
無申告加算税は、納付額に15%~20%と高額になるので、期限には注意が必要です。
また、法人税は法人側が申告しますが、不正があった場合は、重加算税を課せられるケースもあります。
重加算税は、納付額の35%~40%なので、負担が大きくなります。
青色申告を取り消される可能性がある
2期連続で申告期限を過ぎると、青色申告が取り消される可能性があります。
青色申告は税制上のメリットが大きいので、取り消されるのは大きなペナルティと言えるでしょう。
なお、利益がない場合など法人税がかからないケースでも、確定申告は必須となります。
法人税と所得税の違い
法人税とは、法人が支払う税金です。
法人税と所得税を混同するケースがあるので、違いを把握しておきましょう。
所得税とは
所得税は、個人の所得に対する税金であり、以下が対象となります。
- 会社員
- 公務員
- パート・アルバイト
- 個人事業主…など
課税所得は、総所得から経費や控除額を差し引いた金額となります。
法人税
法人税は、法人に対して課せられ、個人とは異なる方法で算出されます。
法人税は、「益金・損金」を用いて算出します。
収益の目的によっては、課税対象となるケースもありますが、一般的に以下は法人税の対象外です。
- 公共法人
- 公益社団法人
- 宗教法人
- 学校法人…など
所得税と法人税の違い
所得税と法人税には、申告時期や税率など、様々な違いがあります。
気になる方はチェックしてみてください。
申告時期が異なる
所得税と法人税は、申告時期が異なります。
所得税の確定申告は、以下のようになっています。
所得税:2/16~3/15
法人税:事業年度終了より2か月以内
支払い時期も異なるので、把握しておきましょう。
税率が異なる
所得税と法人税は、税率が異なります。
所得税は所得が多い人ほど税率が高い超過税率なのに対し、法人税は課税標準に関わらず税率が一定の比例税率となっています。
課税所得によって、個人と法人いずれが節税になるかが異なることになります。
所得の算出方法が異なる
個人の所得は、以下のような10種類の分類があり、算出方法が異なります。
- 利子所得
- 配当所得
- 事業所得
- 給与所得
- 不動産所得
- 譲渡所得
- 山林所得
- 退職所得
- 一時所得
- 雑所得
個人は、それぞれの所得をもとに、所得税を算出します。
一方、法人の所得の算出においては、利益から損金を差し引く仕組みです。
赤字の場合の税金の取り扱い
個人の所得税は、赤字の場合は発生しません。
一方、法人税は、赤字の場合も最低額の税金を支払う必要があるので、負担が大きくなります。
軌道に乗る前に法人化すると、赤字の状態で税金が発生するので、慎重に検討する必要があるでしょう。
所得控除が異なる
個人の場合は、以下のような所得控除を受けることができます。
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 寄付金控除
- 障害者控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 基礎控除…など
一方、法人は控除を受ける仕組みがありません。
法人税は税務署に相談可能
法人税は税務署に相談することができます。
無料、匿名で相談できるので、手軽に利用できるでしょう。
無料で相談できる
法人税の仕組みなどが分からない場合、税務署の職員に無料で相談できます。
税務署では確実な情報を得られるので、慣れていない方におすすめです。
困った場合に何度でも手軽に利用できるので、把握しておくと良いでしょう。
土日祝日以外であれば、年中対応可能です。
匿名で相談できる
税務署で相談する際は、個人情報を伝える必要がありません。
個人情報を伝えるのに抵抗があるという方でも手軽に相談できます。
税についての相談窓口
法人税に関する相談は、各国税局設置の「国税局電話相談センター」で相談可能です。
なお、国税庁ホームページでは、法人税に関する情報が掲載されているので、チェックしてみると有用な情報を得られる可能性があります。
法人税の節税対策
法人税は工夫次第で節税することが可能です。
法人税の節税対策について解説します。
役員報酬を見直す
役員報酬は、法人税を算出する際、損金としての扱いになります。
役員報酬の金額変更は、新しい会計年度スタートから3ヶ月以内という条件があるので、タイミングが重要です。
役員報酬を高めにすると法人税の節税にはなりますが、社会保険料の支払い額は高くなります。
税金と役員の生活を総合的に考慮し、役員報酬を設定する必要があるでしょう。
生命保険への加入を検討する
法人用の生命保険があるので、加入すると節税になります。
生命保険によって、「全額損金扱い」「一部のみ損金扱い」など様々なので、検討する必要があります。
ただし、生命保険は解約返戻金や保険金などが発生した場合、会社の収入扱いになるので、注意が必要です。
社用車を用意する
社用車を用意することで、車の購入費用や維持費、ガソリン代、保険料などを経費計上できます。
社用車の数が多いほど、損金扱いとなるので、法人税の節税につながります。
ただし、社用車の台数が増えると費用も発生するので、必要な台数の見極めが必要です。
福利厚生を充実させる
福利厚生を充実させれば、経費計上できるので、節税につながります。
とくに、社宅の家賃などを福利厚生に含めると、大幅な節税になるでしょう。
実際に、社員の自宅を社宅にするなどの対策を行うケースもあります。
不要な在庫を処分する
不要な在庫を処分すると、損金扱いとなるので、節税になります。
ただし、不要在庫の処分を節税につなげるには、廃棄証明書などを提出する必要があります。
赤字の繰り越しを検討する
赤字を繰り越すことで、法人税を抑えられます。
青色申告をしていれば、法人であれば赤字を最大10年まで繰り越すことができます。
赤字を繰り越せば、黒字になった場合にも、損金として相殺できるのが節税のポイントです。
赤字を繰り越した場合も、法人住民税の均等割分は納付する必要があります。
まとめ
法人税と一般的な税金は、算出方法や控除など様々な違いがあるので、仕組みを把握しておくことが大切です。
法人化すべきか検討する際も、法人税に関する知識は重要になるでしょう。
また、法人税を延滞した場合のペナルティや節税対策についても把握しておくことが大切です。
法人税についての理解を深め、運用に活かしましょう。