「年金受給額に地域格差が生じる理由は?」
「年金受給額を上げるにはどうすれば良い?」
年金受給額は、現役時代の年収に左右されます。
年金受給額に地域差が生じる原因は、地域間の年収格差が考えられます。
年金のみでは将来の生活が不安と感じる家庭が多いので、早めに対策をしておく必要があるでしょう。
本記事では、年金受給額について、地域別の受給額や地域格差が起こる要因などをご紹介します。
年金について不安のある方は、ぜひ、参考にしてみてください。
国民年金保険料・厚生年金保険料の全国平均
日本の年金制度には、国民年金と厚生年金があり、以下のような位置づけになっています。
- 国民年金:20歳以上60歳未満の全ての国民が加入
- 厚生年金:国民年金に上乗せして会社員や公務員が加入
年金の受け取りは一般的に65歳からであり、会社員・公務員は、国民年金に上乗せして厚生年金にも加入しているので、年金受給額が多くなります。
一方、国民年金のみの加入者は、国民年金しか受給することができません。
令和3年度の国民年金の1ヶ月当たりの受給額は6万円台が最も多く、平均は5万6,479円です。
令和3年度の厚生年金の1ヶ月あたり平均支給額は約14万5,665円となっています。
厚生年金は、国民年金に上乗せされる位置づけなので、国民年金よりも受給額は高くなります。
国民年金保険料・厚生年金保険料の都道府県別受給額
令和3年の厚生年金の受給額は神奈川県が最も多く、16万5,321円でした。
16万円を超えているのは、神奈川県と2位の千葉県のみです。
一方、青森県は受給額が最も少なく、12万2,111円でした。
国民年金の受給額は、富山県が最も多く6万0,034円、沖縄県が最も少なく5万2,112円となっていました。
「厚生基礎年金受給額」上位5県
1位:神奈川県:165,321円
2位:千葉県:160,017円
3位:東京都:158,661円
4位:奈良県:157,601円
5位:埼玉県:156,319円
「厚生基礎年金受給額」下位5県
43位:山形県:124,517円
44位:沖縄県:123,755円
45位:宮崎県:123,220円
46位:秋田県:122,914円
47位:青森県:122,111円
「国民基礎年金受給額」上位5県
1位:富山県:60,034円
2位:福井県:59,339円
3位:島根県:59,276円
4位:長野県:59,050円
5位:石川県:58,997円
「国民基礎年金受給額」下位5県
43位:高知県:55,129円
44位:和歌山県:54,794円
45位:大阪府:54,335円
46位:青森県:53,933円
47位:沖縄県:52,112円
参考:令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省
地域により年金受給額に差が生じる理由
国民年金の受給額は、全国一律同じ基準ですが、地域により差が生じる理由が気になる方もいるでしょう。
年金受給額は、支払った保険料や期間に応じて決まる仕組みになっています。
地域差が生じる背景には収入格差があり、収入が高い傾向にある県では、年金受給額も高くなるのです。
なお、上位と下位の県の老後30年の年金差は約1,500万円なのに対し、現役世代の収入差は40年間で約7,000万円となっています。
収入差と年金差を合わせると、格差は非常に大きいといえるでしょう。
とはいえ、都会と地方では、物価の違いもあり、必要な生活費が異なるのではと思う方もいるでしょう。
実際に、都会と地方では、必要な生活費が約5万円程度異なるケースもあり、都会の生活は厳しいと言えます。
ただし、生活費のかからない地方であっても、年金で生活費を賄いきれず、貯蓄を切り崩す家庭は多数あります。
年金の地域格差は大きく、生活格差を考慮しても、年金のみでは不十分というケースが多いでしょう。
将来年金のみの生活では厳しいことを意識し、備えが必要と言えます。
年金受給額を増やす方法
年金の地域格差が生じており、年金の受給額が不十分な場合、老後の生活が心配でしょう。将来の年金受給額は、工夫次第で増やせる可能性があります。
年金の受給額は年収に左右されるので、年収が低い場合は、資産運用などを検討するのも手段です。
国民年金への任意加入を検討する
一般的に、国民年金は20歳から60歳まで加入することになりますが、加入していない期間があると、将来の年金の受け取り額が減ります。
何らかの理由で40年間国民年金に加入していない場合、任意加入できる仕組みとなっています。
とくに、「学生納付特例制度」を利用していた場合、猶予期間分は減額となるので確認が必要です。
年金を満額受給できるよう、60歳以降に国民年金保険料を支払うことを検討するのも手段です。
付加年金への加入を検討する
年金受給額を増やしたい場合、付加年金へ加入するのも手段です。
原則、付加年金は国民年金の上乗せとしての位置づけなので、国民年金に任意加入する場合に検討しましょう。
国民年金保険料に上乗せして月400円かかりますが、老齢基礎年金の受給額は、以下の分増えます。
200円×付加保険料納付月数
5年間付加年金に加入した場合の保険料の合計は2万4,000円ですが、老齢基礎年金受給額は1年間当たり1万2,000円増えることになります。
長期的な目で見るとお得な制度なので、利用を検討してみると良いでしょう。
60歳以降も勤務する
60歳以降も勤務することで、将来の年金受給額を増やせます。
というのも、厚生年金は会社勤務の場合70歳まで加入できるので、保険料を納め続ければ将来の老齢厚生年金受給額が増えるのです。
年金の受給額は年収などの条件によっても異なるので、あらかじめ確認が必要です。
また、社会保険への加入も継続できるので、働き続けることのメリットは大きいと言えます。
業務内容や体力などにもよりますが、年金が気になる場合は、勤務継続を検討するのも手段です。
年金を繰下げ受給する
年金の繰下げ受給をすることで、年金の受給額を増やすことが可能です。
原則、老齢年金は65歳から受け取ることができますが、66歳~75歳の期間で受給を遅らせられます。
受給開始を1か月遅らせると、年金受給額は0.7%ずつ増えることになります。
75歳まで繰下げると、最大84%増えるので、状況によってはお得と言えるでしょう。
貯蓄額や60歳以降の収入などの条件にもよりますが、生活に余裕があるのであれば、年金の繰り下げ受給を検討することが可能です。
ただし、年金を繰り下げ受給すると、年金受給額は増えますが、税金や社会保険料の負担も増えます。
年金受給額の増額と差し引かれる金額を総合的に考慮し、慎重に検討しましょう。
iDeCoに加入する
iDeCoは、個人型確定拠出年金であり、掛け金を選んで運用し、60歳以降に受け取ります。
iDeCoの掛け金は控除の対象なので、節税になります。
また、運用利益が発生した場合、利益分に対して税金がかからないので、資産運用のメリットが大きいでしょう。
さらに、年金として受け取る際も、税制上有利になります。
なお、iDeCoは、5000円から積み立てできるのが特徴であり、比較的アプローチしやすいと感じる方が多いです。
60歳まで受け取れないため、掛け金は無理のないよう調整が必要ですが、節税したい方は検討してみると良いでしょう。
つみたてNISAを活用する
つみたてNISAは、少額投資非課税制度とも言われ、投資により獲得した利益が非課税となる制度です。
投資額は年間40万円までであり、非課税にできる期間は最長20年間です。
所得税や住民税の控除にはならないものの、中途解約が可能ですし、少額より利用できるので続けやすいでしょう。
ただし、つみたてNISAは、金融庁の基準を満たした投資信託が対象となるので、選択肢は限られます。
国民年金基金への加入を検討する
企業勤務の方は厚生年金がありますが、それ以外の方は年金受給額が不十分と感じるケースもあるでしょう。
厚生年金に該当する部分の代用として、国民年金基金への加入を検討するのも手段です。
国民年金基金は、掛け金を一定額支払うことで、老後の年金受給額を増やせる仕組みです。
扶養親族等申告書を提出する
扶養控除申告書の提出により、年金から差し引かれる所得税を抑えられる可能性があります。
控除対象であるにも関わらず、提出が漏れていると、必要な控除を受けられないので注意が必要です。
年金を最大限受け取れるよう、 扶養親族等申告書の提出を忘れないようにしましょう。
年金受給額の目安は現役時代の半額程度になる可能性あり
年金受給額の目安は、現役時代の半額程度と言われています。
なお、年金定期便に記載されている額と、年金の手取り額には、以下のような理由から差が生じます。
- 日本経済の影響で年金が減額になる
- 税金が差し引かれる
- 社会保険料が差し引かれる
年金の受給額に影響するので、それぞれ確認しておきましょう。
日本経済の影響で年金が減額になる
少子高齢化が進んでおり、現役世代の負担を抑えられるよう、年金の受給額は減額になると言われています。
年金の受給額を経済状況に応じて調整する「マクロ経済スライド」が導入されたことが、背景にあります。
将来、十分な年金を得られない可能性を考慮し、備えておく必要があるでしょう。
税金が引かれる
現役世代も、給与を受け取る場合は税金や社会保険料を引かれますが、年金も同様です。
年金から差し引かれる税金は、所得税と住民税であり、一定基準以上の年金を受け取る場合に対象となります。
所得税の課税対象は、以下が目安です。
- 65歳未満:60万円以上の場合
- 65歳以上:110万円以上の場合
なお、配偶者控除などを利用できる場合もあるので、あらかじめ確認が必要です。
住民税が非課税となるのは、年金受給額が158万円以下の場合です。
社会保険料が差し引かれる
年金から差し引かれる社会保険料は、国民健康保険料と介護保険料です。
社会保険料は、多少地域差があるので、確認が必要です。
自身の年金受給額を把握しておこう
年金受給額は地域格差、個人間の格差があり、将来年金のみでは生活費を賄えないケースがあります。あらかじめ年金受給額を把握しておくことで、対策できるでしょう。
夫婦2人で生活する場合、生活費は年間約300万円かかると言われています。
年金受給額は、100万円~130万円となる家庭が多いと言われているので、 経済状況を考慮した上で貯蓄する必要があるでしょう。
まとめ
年金受給額は、現役時代の年収に左右されることもあり、地域間での格差が生じています。
年金のみでは将来の生活を賄えない家庭もあるので、早めに対策をしておく必要があるでしょう。
年金受給額は工夫次第で増やせる可能性もあるので、あらかじめ確認しておきましょう。