健康保険制度により、医療費の負担が抑えられていますが、健康保険の適用外となる診療もあります。
健康保険制度は生活に直結するので、自己負担額や仕組みを把握しておくことが大切です。
健康保険が適用されない診療にはどのようなものがあるのかを、健康保険制度の基本情報とともにご紹介しますので、参考にしてください。
健康保険制度について
医療費について把握するには、健康保険制度の概要を把握しておくことがポイントです。
健康保険制度や関連する制度について解説します。
健康保険制度
働き世代の方が加入する保険は以下に大別できます。
- 被用者保険:健保組合の保険、協会けんぽの保険、共済組合の保険
- 国民健康保険:自営業の方などが加入
健康保険制度により、医療費の負担が軽くなります。
高額療養費制度
健康保険には、高額療養費制度があります。
医療費が高額な場合に、上限を超えた金額をサポートしてもらえる制度です。
年収により、自己負担上限額が異なるので、確認が必要です。
ただし、高額療養費制度を利用するには申請をしなければなりません。
傷病手当金
傷病手当金は、健康保険からの制度です。
傷病手当金は、病気や怪我で仕事を休む場合に、1年6ヶ月間、給与の3分の2をサポートしてもらえる制度です。
傷病手当金の適用となるには、以下の条件がを満たす必要があります。
- 療養のために休業している
- 仕事をできない状態
- 連続4日以上仕事を休んでいる
- 休業期間に給与を受け取れない
ただし、傷病手当金は健康保険の制度であり、国民健康保険は対象外です。
自由診療とは
自由診療は、健康保険が適用されない診療です。
自由診療の場合、治療費が全額自己負担となるので、高額になる可能性があります。
一方、保険診療は、健康保険の適用となる診療であり、一般的に自己負担は3割です。
保険診療の場合は高額療養費制度もあるので、上限に達した場合は、より自己負担の割合は小さくなります。
自由診療の費用は、医療機関と患者との合意のもと決まります。
自由診療を受ける際は、あらかじめ費用を把握しておく必要があるでしょう。
なお、保険診療と自由診療の併用である混合治療は認められていないので、自由診療を受ける場合は保険診療が含まれていたとしても全額自己負担になります。
診療費の自己負担額
診療費は、保険診療、先進医療、自由診療など種類によって算出方法が異なります。
それぞれについて把握しておくと、理解が深まります。
保険診療
保険診療の自己負担額は、通常、3割です。
また、後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上の方は原則1割負担ですが、収入により異なります。
また、未就学児の医療費は一般的に2割ですが、自治体によっては無料としているケースもあります。
先進医療
先進医療を利用する場合、技術料が全額自己負担となります。
先進医療は、保険診療と併用できるので、通常の保険診療分は3割負担です。
指定医療施設においてのみ先進医療が行われています。
自由診療
自由診療は、全額自己負担となります。
保険診療との併用は認められていないので、自由診療を行う場合はその他の医療費も全額自己負担となります。
検査や入院なども含めて自己負担なので、負担が大きいと感じるケースが多いでしょう。
健康保険の対象となる診療
健康保険の対象となる診療について解説します。
診察や検査にかかる費用
診察や検査にかかる費用は、健康保険の対象となります。
ただし、勤務中や通勤中の病気や怪我は対象外です。
治療に使用する薬剤の費用
治療に使用する薬剤の費用は、健康保険の対象です。
ただし、健康保険の対象となるのは、薬価基準に記載がある薬剤のみであり、それ以外は対象外です。
治療材料代
治療材料代は、健康保険の対象です。
また、義手・義足、松葉杖なども一部の自己負担で利用できます。
処置や手術にかかる費用
処置や手術にかかる費用は、健康保険の対象です。
たとえば、以下のような費用が該当します。
- 注射・点滴
- 手術
- 必要な処置
- 放射線治療
- 療養上の費用…など
ただし、特殊な処置に関しては、健康保険の対象外になるケースがあります。
入院・看護費用
入院・看護費用は健康保険の対象となります。
健康保険の範囲内で入院する場合は、一般室を利用する必要があります。
個室など特別な部屋を利用する場合は、差額分の自己負担が必要です。
病気・怪我の診療でないものは原則健康保険の適用外
原則、病気・怪我の診療でないものは、健康保険の適用外です。
健康保険は、病気・怪我の診療を対象としているので、美容整形や疲労による肩こりなど、病気・怪我でないものには適用されません。
ただし、健康保険の適用になるか迷う診療もあるでしょう。
健康保険が適用されない診療は様々なパターンがあるので、あらかじめ把握しておくことをおすすめします。
ぜひ、チェックしてみてください。
美容目的の手術
美容目的の手術は、健康保険の対象外です。
たとえば、以下のような手術が例として挙げられます。
- 目を二重にする
- 脂肪吸引する
- 歯並びを矯正する
- 近視を改善する
美容目的の手術は保険診療の対象外ですが、例外もあります。
怪我による整形手術や生まれつきの斜視など、日常生活に支障をきたす場合は保険診療が認めらえるケースがあります。
人工妊娠・中絶
経済的な理由などで中絶する場合、健康保険の対象外となります。
ただし、母体にリスクがあり、母体保護を目的に中絶するのであれば、健康保険の適用です。
正常な妊娠・分娩
正常な妊娠・分娩の場合の医療費に関しては、健康保険の対象外です。
たとえば、妊娠時の定期健診や出産にともなう入院などは健康保険の対象になりません。
ただし、妊娠時の重度のつわりや異常分娩、帝王切開などに関しては、健康保険の対象になります。
健康診断・人間ドック
健康診断・人間ドックは、健康保険の対象外です。
ただし、検査後の精密検査、再検査に関しては、健康保険の対象となります。
予防接種
予防接種は、通常自己負担です。
ただし、感染のリスクの高い、以下の感染症の予防接種は保険適用です。
- ハシカ
- 百日ゼキ
- 破傷風
- 狂犬病
シミなどの先天的な皮膚症状の施術
シミ取りなど、先天的な皮膚症状の施術は、保険適用の対象外です。
ただし、治療が必要な症状がある場合など、状況によっては健康保険の対象となります。
その他
以下のような費用も、健康保険が適用されません。
- 保険適用外の特殊な治療や手術
- 高度先進医療費
- 受診時の交通費
- 日常生活の疲労によるもの(マッサージ、針など)
- 医師が治療不要と判断する場合
- 先天性疾患で身体の機能に支障を来さない場合
健康保険の適用とならないケース
全ての診療が健康保険でサポートされるわけではなく、適用とならないケースもあります。
ぜひ、チェックしてみてください。
入院にかかる一部費用
入院費に関しては、健康保険の適用になりますが、一部自己負担となるケースがあります。
たとえば、以下のような費用は自己負担です。
- 入院時に必要な日用品
- 差額室料
なお、入院中の食事に関しては、入院時食事療養費の給付対象なので、自己負担は一部となっています。
勤務中・通勤中の怪我
勤務中・通勤中の怪我に関しては、労働者災害補償保険の対象なので、健康保険は適用されません。
勤務先へ連絡後、医療機関にて労働災害であることを伝える必要があります。
なお、労働災害の場合に保険診療として受診すると、手続きが煩雑になるので注意が必要です。
自由診療のメリット
自由診療は健康保険の対象外なので、費用負担が大きいですが、メリットもあります。
自由診療のメリットは、自分の病状に合う治療を受けられることです。
とくに、がんなど命に関わる病気にかかっている場合、保険診療で十分な治療効果を期待できないのであれば、自由診療を利用するのも手段です。
自由診療は最先端技術を利用できることもあり、治療の選択肢が広がります。
自由診療のデメリット
自由診療のデメリットは、自己負担が大きくなることです。
全額自己負担なので、治療が長引く場合、負担が大きいでしょう。
また、保険診療と組み合わせる混合診療となる場合も、全額自己負担になるので、抵抗を感じる方も多いです。
また、自由診療は最先端ということもあり、治療効果を得られる可能性がある一方で、何らかの有害事象が発生するケースもあります。
自由診療を選択する際は、あらかじめデメリットを把握した上で検討する必要があります。
自由診療に対応した保険制度あり
病気の治療で自由診療を行うのは、がんの治療が多いです。
がんの治療法は進化しており、自由診療にて最先端医療を受けるケースもあるでしょう。
がん治療は高額になるので、自由診療を受けられるよう、あらかじめ保険に加入しておくことも手段です。
自由診療に充てられる一時金タイプ
がんと診断された時点で、一時金を受け取れる保険があります。
受け取る頻度や金額は保険によって異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
一時金を自由診療の費用に充てることも可能です。
特定の治療を受けた場合に受け取れる保険
がんの治療法は、放射線治療、抗がん剤治療など様々です。
特定の治療を受けた場合に、給付金を受け取れる保険もあります。
自由診療に対応している保険もあるので、確認してみると良いでしょう。
全ての治療に対応した保険
保険診療や自由診療に関わらず、全ての治療に対応した保険もあります。
全て対応であれば、自由診療の費用もまかなえるでしょう。
ただし、保険料が高額になるケースが多いので、無理なく支払いを継続できるかあらかじめ検討する必要があります。
まとめ
病気・怪我の診療は健康保険制度により自己負担額が抑えられていますが、健康保険が適用されない診療もあります。
病気・怪我に関連のない診療のみならず、最先端医療なども適用外となるケースがあります。
健康保険で全てまかなえるわけではないことを考慮し、将来に備えて保険に加入しておくなどを検討する必要があるでしょう。
健康保険制度の仕組みや健康保険が適用されない診療内容について理解を深め、将来に備えましょう。