個人事業主になる場合は、煩雑な手続きは必要なくコストもかからないので、ハードルは低いと感じる方もいるでしょう。
ただし、個人事業主になる際は、開業前に必要な準備を計画的にしておく必要があります。
必要な手続きが漏れていると、トラブルになる可能性があるので注意が必要です。
本記事では、個人事業主になるために必要なことや準備と流れ、条件などをご紹介しますので、ぜひ、参考にしてみてください。
個人事業主とは
個人事業主には明確な定義があるわけではないですが、法人としてではなく、個人として事業を営んでいる場合を意味します。
副業としてであっても、開業して個人で事業を営んでいるのであれば、個人事業主ということになります。
個人事業主になるメリット
個人事業主になることを検討する際は、あらかじめメリットを把握しておくことをおすすめします。
個人事業主のメリットについて解説しますので、参考にしてみてください。
やりたい仕事を選べる
個人事業主は、雇用されている立場ではないので、やりたい仕事を選べるのがメリットです。
たとえば、「プログラミングを行う」など、自身の得意分野で仕事を行えます。
また、働いた分だけ報酬を得られるので、モチベーションを保ちやすいです。
一方、プライベートを両立させたい場合は、仕事量を調整することも可能です。
自己管理が重要ではありますが、比較的自由度が高く、働きやすいと言えるでしょう。
法人よりも手続きしやすい
個人事業主は、法人よりも手続きしやすいと言われています。
というのも、法人は登記などの手続きが煩雑ですが、個人事業主は開業届の提出のみで事業を営めるのです。
また、個人事業主は、事業の追加や変更も自由に行えます。
なお、会計処理や年末調整、廃業する際の手続きも比較的簡単に済ませられます。
手続きの観点からも、個人事業主は法人よりもハードルが低いと言えるでしょう。
青色申告特別控除の対象になる
個人事業主として開業し、必要な手続きを行えば、青色申告特別控除を受けられます。
青色申告特別控除の対象となれば、最大65万円の控除を受けられるので、税制面で有利になります。
なお、最大65万円の特別控除を受けるには、以下のいずれかが必要です。
・e-Taxによる電子申告
・電子帳簿保存
あらかじめ電子申告できる環境を整えておく必要があります。
開業費用がかからない
個人事業主は、開業費用がかかりません。
法人の場合は、登録免許税などを含め数万円~数十万円の開業費用がかかるので、コストがかからないのは個人事業主の魅力と言えるでしょう。
赤字を繰り越せる
個人事業主は、赤字を繰り越すことが可能です。
赤字の繰り越しは最大3年間なので、開業後に赤字になった場合も安心です。
赤字の繰り越しにより、課税対象となる所得を減らせるので、税制面の優遇が非常に大きくなります。
事業開始後にすぐに黒字になるのは難しいので、赤字の繰り越しは大きなメリットといえるでしょう。
社会保険への加入義務がない
個人事業主は法人と異なり、社会保険への加入義務がありません。
社会保険に加入すると、会社と従業員の負担が半々になるので、会社にとっては負担になります。
とくに、開業したては資金力も不十分なので、社会保険への加入が必要ないのは経営上大きなメリットと言えます。
個人事業主のデメリット
個人事業主には様々なメリットがある反面、押さえておくべきデメリットもあります。
後悔を防ぐには、あらかじめデメリットについても把握した上で、総合的に判断する必要があります。
個人事業主のデメリットを解説しますので、参考にしてみてください。
社会的信用を獲得するのが難しい
個人事業主は法人と比較し、社会的信用を獲得するのが難しいというデメリットがあります。
とくに、資金集めとして金融機関からの融資を受ける場合、審査に通過できないケースがあります。
また、法人よりも仕事や人材を獲得しにくく、思うような成果を得られないこともあるでしょう。
事業を拡大する際は、社会的信用の高い法人が有利です。
事業以外の作業も含めてこなす必要がある
個人事業主は、営業活動や事務作業などをすべてこなす必要があります。
たとえば、「確定申告の手続きを全てこなすのが負担」「事業を営みながら営業活動をする必要がある」など負担に感じるケースがあります。
とくに、個人事業主として開業直後はやるべきことが多く、負担に感じるケースがあるでしょう。
個人事業の始め方
業種などによっても異なりますが、個人事業スタートの大まかな流れを把握しておくとスムーズです。
個人事業の始め方について解説しますので、参考にしてみてください。
事業内容を決める
個人事業主として開業する際は、事業内容を決める必要があります。
事業内容を決める際は、情報収集やビジネスモデルの検討などが必要です。
競合企業と差別化できる強みを活かし、ビジネス展開するのがポイントです。
事業計画を立てる
事業内容が決まったら、実際に事業計画を立てます。
たとえば、以下のような点を検討する必要があります。
- 事業を開始する際に必要なもの
- 仕入れの方法
- 事業の規模
- 初期投資額
- 必要な資金
また、事業計画を立てる段階で、売上などの大まかな目安を立て、収支計画を立てておくとスムーズです。
資金を確保する
事業を開始する際は、資金確保が必要です。
とくに、自己資金で賄えない場合、金融機関からの融資などを検討する必要があります。
事業計画が明確になっている方が、金融機関からの融資を受けやすくなります。
開業届を出す
個人事業主になるには、開業届を出す必要があります。
開業届を提出する期限は、事業開始後1ヶ月以内です。
開業届は、以下のいずれかの方法で提出します。
- 税務署へ直接持参する
- 郵送する
- インターネットで提出する
慣れていない場合は税務署に直接持参すると、記入方法などを教えてもらうことができます。
平日に対応できない場合は、税務署の時間外収受箱への投函、郵送もしくはインターネットで提出しましょう。
なお、国税庁のホームページに開業届があるので、書類は簡単に手に入れられます。
個人事業主として開業する際にやるべきこと
個人事業主として開業する際、何から手をつければ良いか分からない方もいるでしょう。
個人事業主として開業するには、必要な手続きを把握し、計画的に進めることが大切です。
やるべきことが漏れると、トラブルにつながるので注意しましょう。
個人事業主として開業する際にやるべきことについて解説しますので、チェックしてみてください。
本業がある場合は就業規則を確認する
本業を続けながら個人事業主となるには、就業規則を確認する必要があります。
というのも、就業規則で副業禁止となっているケースもあるのです。
就業規則に違反して副業をすると、トラブルになる可能性もあるので注意が必要です。
社会保険に加入する
会社を退職して個人事業主になる際は、社会保険に加入するのが一般的です。
個人事業主が加入すべき社会保険としては、以下が挙げられます。
- 国民健康保険
- 国民年金
国民健康保険に関しては、前職の健康保険の継続もしくは国民健康保険への新規加入を選べます。
年金は、厚生年金から国民年金へ移行することになります。
屋号を決める
個人事業主として開業する際は、屋号を決めましょう。
屋号はビジネスを行う際の名前であり、いわゆる会社名と同様の位置づけです。
ただし、屋号を決めたくない場合は、事業者名でビジネスを行うことも可能です。
屋号を決める際は、以下のポイントを把握しておきましょう。
- 屋号から事業内容をイメージしやすくする
- 利用する予定の屋号がすでに使われていないか確認する
屋号を決めたら、税務署に届け出ます。
途中で屋号を変更したい場合も、税務署へ届け出ることで対応可能です。
許認可を申請する
個人事業主が事業を開始するには、許認可が必要になるケースがあります。
事業により、許認可を受ける窓口や要件は異なるので、あらかじめ確認が必要です。
許認可を受ける窓口の例としては、保健所や警察署が挙げられます。
なお、年間所得を算出し、申告・納税する必要があります。
許認可が必要な場合に受けていないと、罰則の対象となる可能性があるので注意が必要です。
補助金・助成金を利用できないか確認する
個人事業主として開業する際は、補助金・助成金を利用できないか確認することをおすすめします。
というのも、資金が不足していることで、思うように事業を進められないケースがあるのです。
とくに、開業したての段階では金融機関の審査にも通過しにくく、なかなか資金が集まらない可能性があります。
状況によっては、国や地方自治体の補助金・助成金を受けられる可能性があります。
スムーズに開業できるよう、資金調達の方法についても確認しておきましょう。
確定申告の準備をする
会社務めの際は確定申告不要のケースが多いですが、個人事業主になると確定申告が必要です。
確定申告に向けて必要な準備をしていないと、期日が迫った際に作業量が多く、負担になります。
スムーズに確定申告を行うには、あらかじめ準備しておくことが大切です。
なお、確定申告は、以下のようになります。
- 対象:前年1月1日~12月31日分の所得
- 確定申告時期:翌年2月16日~3月15日
年明けに焦らないよう、会計書類など必要なものを準備しておきましょう。
事業用口座を準備する
個人事業主の方は、事業用口座を準備するのがおすすめです。
個人用口座を利用する方もいますが、確定申告を行う際、仕事とプライベートを判別しにくく複雑になる可能性があります。
確定申告では、収入、経費を明確に区別する必要があるので、分かりやすいよう分けておきましょう。
なお、屋号のある個人事業主であれば、屋号名義で事業用口座を作ることが可能です。
個人事業主として開業する段階で、新たな口座の準備を検討しましょう。
まとめ
個人事業主は開業費用がかからないことに加え、赤字を繰り越せるといった税制面での優遇があるなど、様々なメリットがあります。
法人と比較して社会的信用は低いものの、個人事業主の開業を検討するケースは多いです。
個人事業主になる際は、トラブルを避けるため、様々な手続きや準備をしておく必要があります。
また、確定申告も必要になるので、着実に準備を進めなければなりません。
あらかじめ個人事業主になるためのステップや必要な準備を把握し、スムーズに進めましょう。